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[コメント] カムイ外伝(2009/日)

削ぎに削ぎ、研ぎ澄まされた幾つものエピソードが織り込まれた丁寧な脚本と効果的なナレーションは原作を知らずともその世界観に観客を誘う。躍動するワイヤーアクションとそれを追う今までに観たことがないようなカメラワークは既に芸術の域。崔監督が織り成す残酷と美の共存を観た!
IN4MATION

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







原作は全く知らない。

イメージとして『あずみ』『どろろ』に似た印象を持っていたが、作品の質も内容もテイストも全く異なっていた。

「忍を抜けることは死ぬことだ。覚えておけ、カムイ」

だが非人として虐げられ、生きるために力に憧れ忍の道に入り、抜け忍を斬り一揆を興した何百もの農民を斬るうちに、空しさに駆られ抜け忍となるカムイの生き様を冒頭で理解させるナレーションと映像は秀逸。

「そして14年。忍を抜けた男の長い物語が始まる。」

島に漂着し、幾つものエピソードが丁寧に織り成す抜け忍カムイと漁民の触れ合い・交流。一時的な安息の時間。

鮫殺し・渡り衆との出会い。抜け忍の別の生き方を提示しておきながら、その実、頭のフドウは追忍というオチ。

漁民・渡り衆の皆殺しの地獄絵図の中での決闘。カムイの怒りが伝わってくるクライマックス。松山ケンイチの身体を張った演技も光る。彼の代表作になるに違いない。

観終わった後、悲しさと疲労感が襲う。

「非人が米なんか食えると思うな!」

「汚いんじゃ! やっちゃれ! やっちゃれ!」

「一般」として描かれている農民の言葉が余りに悲しすぎる。

惜しむらくは消し損なっているワイヤーが幾つか散見する箇所と何の哀愁も感じない空っぽなエンディング曲くらいか。

(評価:★5)

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