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[コメント] ATOM(2009/米=日=香港)

「子供と一緒に観て!」という他サイトの高評価レビューを信じて幼児を連れて鑑賞。幼児は「こんなの観たくない」と途中退場したが、子供乍らのその判断こそ中々見事だと思う(その為かreviewは辛口)。☆3.1点。
死ぬまでシネマ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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俺は最後まで観たが、「最後まで観てれば良かったのに」と言える展開はとうとう最後まで訪れなかった。

子供向けという事で、少々詰めの甘い描写がある事は見逃す(人前で言わないような台詞を大統領が大声で言ったりする所など)。しかしトビーがピースキーパーに「殺される」場面、あれは最後PKの消滅と共にトビーが帰ってくる伏線になのではないのか? でないと吸収された大統領が帰ってくる事が理解出来ない。PKに「吸収能力」があると見せた上でやっておいてサ。

もしトビーが戻ってきた場合、ATOMはDr.テンマの所に戻る事は出来ない。しかしその時こそATOMは自分自身の場所を見つける事が出来た筈だ。トビーの生還は子供に混乱を与えると最終的に判断したのだろうが、この映画では(ちらつかせた癖に)トビーの再生を封じ、テンマと中途半端な和解をしてしまった為に、原作のメッセージが弱められた形になった。

原作ではアトムは飛雄を知らなったと思う。だから飛雄になれない。ATOMはよりトビーに近く、よく苦笑いをする。米国の子供向けアニメキャラはよく苦笑いするが、苦笑いとは相手を見くびった感情であり、原作の「鉄腕アトム」では無かったと思う。アトムの天真爛漫は彼がロボットである故であり、それが読者に「人間の悪」を考えさせる鏡になっていた筈だ。それをこの映画の制作者は解っていない(キューブリック=スピルバーグの『A.I.』の方が余程解っている)。

同じロボットである筈のATOMが無傷でPKだけが消滅するのは余りにおかしいし、地球を再生し得る無限エネルギーと言われるコアなのに、その合一時の放出エネルギーがあの程度なのも(であるとATOMが解っていた?事も)、都合が良すぎる。

友だちのコーラの両親が全く描かれていない事も疑問と不信を生じさせる。

しかし若干の『A.I.』もどきもさる事乍ら、PKの「暴走と吸収」はカオナシを連想させたし、ロボの造形もどことなく宮崎 駿チックで、オマージュの相手を間違えているのではないか?と思う。宮崎は自らを手塚の系譜とは考えておらず、両者は緊張したライバル関係だった筈だ。ここ10年ばかり日本リスペクト映画が作られて来てはいるが、最も大切にして欲しい「鉄腕アトム」では、それは間に合わせのものだったようだ(これをおためごかしという)。

(評価:★3)

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