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[コメント] おとうと(1960/日)

映画単体として考えるなら、これは最高級の作品。ただし、私自身の何かがこの作品を拒否する。レビュー書くも複雑な心境だよ。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 幸田文の代表作を市川崑監督が入魂の映画化。当時大映にいた監督は水木洋子の脚本に惚れ込み、絶対自分が映画化したいために大映に脚本を買わせたそうだ。

 原作の方は既に読んでいた。確かに良い作品だとは思うのだが、そのあまりの暗さにかなりげんなりした気分にさせられていた。

 あの作品の映画化というと、どう見積もっても気分が浮き立つような作品にはならないはず。それは最初から分かっていたのだが、映画の出来は私の予想を超えていた。

 「原作に対する最高の批評」と呼ばれるのは伊達じゃない。映画としての完成度はもの凄く高かった。

 …だけど、完成度が高いからこそ、その暗さは半端なものじゃなく、観ていることそのものがきつくなった。もう観てるだけで痛々しくていたたまれない気分(それも狙いか?)。

 市川作品の初期には必ず登場していた、これも名脚本家である和田夏十(監督の妻)、は本作ではクレジットされていないが、4時間近くあった脚本を再構成したのが和田だという(ラストの名場面とされるロング・ショットも和田のアイディア)。全くすさまじい脚本だった。

 この作品はストーリーだけでなく、映像美としても語ることができる。名カメラマン宮川一夫の実力を遺憾なく発揮している。まるで白黒映画のような雰囲気は、フィルムに特殊効果をかけて、色調を落として全体をくすんだ雰囲気に作り上げる。これは協力を得て編み出した“銀のこし”と呼ばれる独特の手法を用いたお陰。

(評価:★3)

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