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[コメント] 戦争と平和(1947/日)

美術はモノホンの迫力であり比類なく、水木しげるの戦争漫画の世界そのものだ。あの半焼したビルのリアルなこと。シュールレアリズムとは戦争においてはリアルである。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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本作は『戦ふ兵隊』(39)の続編だ。中国大陸で路上に倒れる軍馬の反復がそう宣言している。そして村を明け渡す中国人たち。明け渡された村への日本軍の進軍と一対を描いている。 ドイツ表現主義は第一次大戦のもたらしたグロテスクとともにあった。邦画はこれをすでに輸入していた訳だが、本作ではじめて内実が伴ったという重みがある。池辺良の切り続ける『千と千尋』の呪いみたいな十文字の紙切れは何だろう。十字架なのかそれとも他の新興宗教なのか。押しの強い息子役が出色。岸旗江さんはまだ可愛い。

伊豆肇の、旗・池辺との三角関係を無限遠点に返して「お前も俺も戦争の被害者じゃないか」共闘しようという簡単な総括が具体的だった。革命は戦争に乗じて起こすという左翼のノウハウのリアルがある。こういう認識は戦争の記憶が遠ざかるにつれて色んなシガラミが付着して主張できなくなるのだろう。一方菅井一郎のように軍閥と軍需産業が甘い汁を吸っているという、中国の壁画とともに日中庶民(正にプロレタリアート)が共有している認識は事実として残るのだった。

(評価:★5)

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