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[コメント] アバンチュールはパリで(2008/韓国=仏)

小さなズーミングも頻出するが、同様にパンニングも多く使われる、いつものスタイル。ドリーのようにカメラを移動させることはしない。ズーミングとパンニングは、同じ感覚なのだろう。
ゑぎ

 カメラ(スタンド)は不動のまゝで、視野(及び画角)を変化させたがる志向性とは何なのだろう。面倒くさいから(金がかかるから)、では絶対に無いだろう。私は非常にカメラを意識してしまう。これも超越した第三者の視点を模したものなのだろう。神の視点とまで云えば大げさだが、ホン・サンスの視点を観客に突き付ける。

 しかし、本作は下世話な内容ながら、とても面白く見ることができる。男と妻、男がパリで出会った4人の女たち(元カノのミンソン、元カノの後輩ユジョン、ユジョンのルームメイト−ヒョンジュ、そしてユジョンの後輩ジヘ)との関係性の変転がずっと興趣を持続させる。また、ちょっとした日常のスケッチで現れる道具立ても実に面白い。主人公は画家なので、絵画が多数。あるいは、小鳥、鳥の雛、すりガラスの窓に鼻を押し付ける豚?これも絵画だが、双頭の牛の絵などなど。そして、2度ある、夢のシーンの挿入が非常に効果的だ。ちょっとこれは舌を巻く巧みさだ。こういうところを見ると、簡単に真似できそうで、誰にも真似できないスタイルなのだと思う。

 尚、劇伴はベートーベンの第7番第二楽章(アレグレット)のみ。なんか適当に流れてきて、いつのまにかフェードで消えている、といった使われ方は、格好いいし、ゴダールみたいだが、ちょっとワザとらしくも思う。

(評価:★4)

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