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[コメント] 指導物語(1941/日)

往かぬ身はいくぞ援護へまっしぐら。物資欠乏を精神で埋め合せてくれる奴隷こそ大日本帝國に相応しい人材だと高らかに謳って止まない愚作。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







鉄道省の割り当てで東宝が撮らされた映画で、右翼の熊谷は嬉々として撮っている。撮影はときどき面白く、機関車の轟音、線路のアップと顔アップの連発は迫力がある。クロサワは熊谷が好きだったらしいが、この辺り影響関係があるだろうか。旋盤工になる若原春江は『一番美しく』の前段のようで、中村彰の幻覚、学生時代の二重写しの回想はよく撮れている。

しかしその内容は悲惨なものだ。中村の「三時間しか寝ていません」はこの「学生運動上がり」のノイローゼ扱いされているが、そんな状態で機関室に入れるなよと思う。石炭使用料が多いと給料が減らされるというのもすごい話だ。こういう事情は全て、お国の非常時だガンバローの連呼で掻き消される。余りにも単純で感激家の丸山定夫の教官と、余りにも朴訥とした見習の藤田進こそ、物資不足を精神で補う大日本帝國に相応しい人材なんだろう。見通しのない戦争は悲惨だ。

(評価:★2)

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