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[コメント] 黄金のルイ(1909/米)

ペーソスの確立、メロドラマ女優リリアン・ギッシュを予見していた薄幸の少女キャラが生み落とされるグリフィス史上記念碑的なSO-SO作品
junojuna

 欧米にはいわゆる「ゴールデンチャイルド」ものと呼ばれる「奇跡、幸運を招く子供」という精神的風土がある。本作においてグリフィスは、そうした欧米の古典的題材をいち早く映画で語るドラマとして取り入れるという先見の明が光る早熟な仕事ぶりを見せた。劇空間そのものはまだまだ演劇的身振りの過剰な演出に前時代的な臭さを残しているが、一見してリリアン・ギッシュのプチ版と呼べる「薄幸少女」キャラを生み出したことは、彼のドラマツルギーの真髄を垣間見せた意味においてひじょうに趣深い。逆に現在から見たときに、わずか6分程度の尺で、ここまでドラマを語って見せるのは驚異的な作劇であると思わせ、さらにはサイレントという制約もありながらと思えば、映画の先史は、現在とは全く違った創意が必要だったのだということに改めて合点する。またこれが希代の大作家グリフィスのものであったことは大いにうなづけよう。グリフィス史においての明の明星である。

(評価:★3)

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