[コメント] 七つの顔(1946/日)
46年なのに画面から空襲の傷跡が一掃されているのは、コロナ禍の新作映画で誰もマスクしていないのと同じなんだろう。このようにリアルはしばしば記録されない。しておくべき題材なのに。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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しておいた方が後の価値だと判らないのだろうか。現実を忘れたいという観客の生理の反映とか、時代のトピックをいちいち収める山田洋次的な作劇は空々しいと感じる演出側の生理などが伝わってくるようだ。
東洋劇場のリリイシスターズ出演、46年なのにデカいホールでのレヴューという導入からして不思議。終戦直後でもみんな貧乏ではなくて極端な貧富の差があったのはクロサワ『素晴らしき日曜日』でも描かれた処だった。最初に貴方のギターなしでは私は唄えない、と唄う女性が無茶苦茶可愛い。歌劇団出身の轟は当然歌上手い。
こういう不思議な場所だから、お面かぶった盗賊が現れるのにこんな相応しい場所もないように見える。火事なのに女も男も誰も消火活動せず絶叫しているだけという描写も異様なものだ。この掴みが本作のベスト。殺伐とした面々のなか磊落な片岡千恵蔵の登場に観客は轟と共にホッとするだろう。恋愛に発展するのも判らなくはない。
その後は、いかにも犯人の月形が犯人でないという見立ての展開、同じ形の家が二軒あった、みたいな謎解きで大したことないが、カーアクションのカット繋ぎはイカシている。松田定次は頑張っている。しかしカーチェイスが廃墟の横通る訳でもなく、ピアノ弾いているブルジョア家庭とか立派なバーとかの描写は不思議なものだった。ラストは「連れて行って」と追いすがる轟、「我は白百合を愛す」とかいいながら去って行く千恵蔵であった。
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