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[コメント] 死者にかかってきた電話(1967/英)

シドニー・ルメットの中では、極めて好感を持つ部類(一番好きかもしれない)。まずフレディ・ヤングの撮影の寒々としたルックの統一が出色。加えてクインシー・ジョーンズの音楽がスリリングでカッコいい。
ゑぎ

 結局ルメットっていう人も一貫したスタイルのない人だが、普段の演劇臭さは本作ではあまり感じられない、渋いディレクションを見せる。もっともこの映画には重要な演劇シーンが二つあり、これで演劇への志向性を満足させたのかもしれない。或るいは主人公ジェームズ・メイソン、その妻ハリエット・アンデルセン、そしてナチに痛めつけられた過去を持つシモーヌ・シニョレの醸し出す複雑な雰囲気が臭い演技を感じさせないとも云えるだろう。

 二つの演劇シーンについて書いておきたい。一つ目は小劇場での「マクベス」の稽古シーン。若きリン・レッドグレーヴが小道具係で登場するが、この頃はとても可愛い。偉そうな演出家を演じるのはコリン・レッドグレーヴか。そして二つ目の演劇シーンは本作のクライマックスと云ってもいい「エドワード二世」観劇シーン。何と舞台ではデビッド・ワーナーがエドワード二世を演じている。その舞台風景とシニョレ、メイソン、マクシミリアン・シェル達がクロスカッティングされるのだが、視線と表情の演技演出がスリルの醸成に見事に機能している。この場面のシニョレの顔がいい。あと、重要な脇役で元警官を演じるハリー・アンドリュースがいる。この人がいい味を出しており、実は最も印象に残るキャラクターかもしれない。彼の居眠りのリフレインが面白い。特にメイソンが話し出すと居眠りをする。また、暴力的な見せ場もある。そしてラストのラスト。この複雑なエンディングも私の好みです。

(評価:★3)

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