[コメント] 蒼い記憶 満蒙開拓と少年たち(1993/日)
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恭太と健次の容姿が似ているのもあって、最初の方では恭太と健次が半々ぐらいで描写されるのでどちらが主人公か判りかねたが、二人を対等に描くことで、明暗を分ける運命が際立ったとも言えるだろう。「本当に五属協和なら、なぜ戦争をするのか」と健次が投げかけた言葉が後に恭太の述懐として蘇ったり、健次の兄、健一が「満州はもうダメかも」という不吉な独り言が恭太の過酷な運命の伏線となっている。
引き揚げの途中で知り合う母子4人家族は『流れる星は生きている』の藤原家を連想させる。藤原家とは違って、末っ子の赤ん坊は中国人に預けてしまうのだが、なるほど、こういった経緯で中国残留孤児が生まれたのかと納得させられた。
母子とはぐれたスミ子を恭太の初恋の相手であるセツ子に重ねる描き方もいい。 子供たちだけで問題を解決しようとするのは『火垂るの墓』を彷彿とさせる。観客と同年代の少年を中心に描くのは少年向けアニメとして真っ当な作り方だが、大人が見ても十分楽しめるし、ラストシーンには大いに胸を震わされるだろう。
きっと恭太は先生の遺志である"この悲劇を伝える"つもりであろう。しかし帰国したはいいものの、満州の生活とのギャップに疎外感を感じたり、国に騙されたという意識が 健次との友情にヒビを入れるかもしれない。それは恭太が健次を義勇軍に誘って断られた時に言う、「おらたちが鍬担いで戦っている間、お前は"のうのうと"勉強かよ。」という言葉が予見させる。
"のうのうと"生活していた(わけではないと思うが)健次は我々なのかもしれない。『EUREKA』で描かれたように"悲劇を共有した者しか共感し合えない"ということも致し方ないと思うが、体験していない者も想像力をフルに使って後世に伝える義務があるのだ。そういった意味で、"満州引き揚げ"という今の子供たちには馴染みの薄いテーマを伝えてくれるこの作品は意義深い。
ところで、シンジ役の声がクレヨンしんちゃんだったので吹いた。しかも呼び名が"シンちゃん"って、まんまですやん。
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