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[コメント] サベイランス(2008/カナダ)

近年落着きを見せてきたデヴィッド・リンチが、娘に託した若き日の嗜好。
chokobo

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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とてもよく構成された映画だと思いました。

この残虐性だけを見ると、アメリカのどこかの町で起きてもおかしくないようなお話であり、そしてこの程度の作品であれば、誰かが手がけることができるレベルの作品でしょう。

しかし、この監督の父親デヴィッド・リンチは、もともと「目をそむけたくなる」ような世界を描いてきた監督です。

娘がどれほど父親から影響を受けたかはわかりませんが、明らかにリンチワールドだったと思います。

この映画の唯一の救いはステファニーという8歳の少女ですね。

この少女だけが、この映画の救い。それは天使であり現実です。

このあどけない少女だけが、ここに出てくる人物を全員俯瞰で見ている、というラストの荒野に佇む少女の後姿を見て、腐敗した大人の世界のありふれた現実に飛び込む恐怖をまざまざと見せつけられた気分ですね。

すごいお話でした。

この映画にはほとんど善人が出てきません。

本来であれば正義の立場にいる警察もFBIも誰もかれもが結局「悪人」であることを映像に残すだけの残虐なお話ですね。

にもかかわらず、淡々とこの映画を見て、感情の抑揚を感じることができるのは、ひとえに子供の目から見た現実だからなんでしょうね。

恐ろしい映画でした。

映像としても見応えのあるシーン満載で、何気ない風景がとても芸術的でよかったと思います。

2010/12/30 自宅

(評価:★4)

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