[コメント] イリュージョニスト(1983/オランダ)
身振りと視線の映画。手の届かない想いへの哀感が滲み出て切ないGOODムービー
決してサイレント映画ではないのだが、全編にわたって台詞らしい台詞はひとつも繰り出されない不思議なカルトムービーである。カルトムービーとは不思議なものと相場がきまっているが、荒唐無稽な設定でありながら奇をてらうことなく、静かな抒情が奥ゆかしく沁みる美しい映画である。主演の兄を演ずるフリーク・デ・ヨングのイノセントが漂う演技は目を瞠るものがある。前半、弟とじゃれあいながら馬鹿兄弟を演じ続けるのだが、弟が精神病院に連れ去られてしまう姿を、幼子の無力さで見送るシーンはじつに哀しい場面である。孤独が募るヨングの演技に、物語は母親を殺すイメージで幕を閉じる。この映画を言葉で語ることは無意味である。一瞬一瞬の身振りと視線の先にあるイマージュをただ見つめることで想起する「思われ」に身を委ねることだけが、この映画の観賞の仕方である。ひっそりと存在する驚異の映画である。
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