[コメント] 17歳の肖像(2009/英)
映画を見終った人むけのレビューです。
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外界から閉ざされた生活を送る少女がある大人の男性の介入により、その生活を自ら離れるが、また自ら失いかけたものを取り戻すという話。"教育"が全てを左右するというテーマには大きな意味で同意したい。
国や時代は問題ではなく、どの国のどの17歳にも当てはまる要素ばかりで、しかも少女の繊細な感情の描かれ方が実に具体的で見応えがあった。現在の閉ざされた生活から逃れたいと思い、逃れる手段を探し、しかし目の前に用意されれば戸惑い恐れ、結局は元の生活に戻りたいと思う部分などを単純明快にかつ繊細でファッショナブルに描いているところに好感が持てた。
当時よりは大人の世界を知ったつもりの自分でも、なぜか少し不安になるような気持ちになったりして面白い。 こんな映画を17歳の時に観ていれば…と後悔することはないが、それでも自分を客観視できる力は今よりは無いはずだから、もし観ていたら数年後に違いが表われたかもしれない。どれだけ現実と違わぬ大きさで自分を客観視できるかが、すてきなレディになれる条件だと再確認させられた。
他のレビュアーの人は皆男性なのかと感じてしまうくらいやや厳しめだ。 これはかつて確実に少女だった全ての女性のための映画だと思う。 映画論みたいなものを振りかざしている人がいるけれど、そういうふうに観るのではなく、ヴァージンを無くすか無くさぬかを自分で選べる立場だった少女時代を持つ女性が、ただただ懐かしく感傷的に繊細に美しい気持ちで涙を流したりしながら観ればいい。親、先生、友人、ボーイフレンド…など様々な立場の人とのやりとりを自分の過去と比べながら、そして結果どんな現在を過ごしているかを確認しながら。
ひとつだけ悔しいのは、鑑賞者(=かつて確実に少女だった女性)は主人公の少女のように簡単にやり直せる現実を過ごしていないということ。たとえ愚かな自分に気づいたとしても、先生に頼ったり試験を受け直したりすれば失ったものが取り戻せるような場所に、もう居ない人ばかりではなかろうか。だからこの主人公だけひとり羨ましく思える構造であることが、映画的にも惜しい。
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