[コメント] ソルト(2010/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
もうこの作品は細かいことを言わず、ジョリーの雄志を観ていられるだけで良い。 いやむしろ、そこから目を反らしてしまうと穴ばかりしか見えなくなる作品なので、売りとしてはそれで良い。この割り切り方は充分立派な作品だ。
だからこれ以降は本作を好きな人には不快になると思われるため、読むことをお勧めしない。そもそも私はそういう観方しかできないのだから。
持論だが、映画というのは大体20年サイクルで回っているものと思っている。今は丁度2010年なので、大体映画のジャンルとしては1980年代後半から90年代前半あたりのものを参考にするのが良いと思っている。
この時代の特徴は派手ではあるが、脳天気な明るさよりも多少ダークに、そしてマニアックになっていくこと。キャラの魅力で押していくよりも、ガジェット的なものを全面に出し、奇想天外なアイテムを、緻密な構成の中で活かしていくことが求められた時代だった。良い例で言えば、『アバター』(2009)は丁度90年代に出た映画をうまく再構成した作品として考えることが出来るだろう。
それに対して本作はどうだろうか?
一方本作の場合、ガジェット的なものを切り捨て、キャラ単体の魅力を最大に前面に押し出し、他のものは振り捨ててしまっている。そのため肉体を用いた生の質感、最後までわからない黒幕と、主人公の立ち位置、そこで展開される息詰まるサスペンスが主眼となっており、作品としての質的には高いもので、内容も決して空疎ではない。
しかし、この設定は、大分古い印象を受ける。この作り方は実は70年代の作り方に他ならないから。
先に言ったように20年サイクルで考えるならば、今は80年代後半の作品に注目すべきを、70年代中期から後期のアクション作品(例えばブロンソン主演作品とか)を手本にしたとしか思えず、その意味では少々時代的にずれがあるのかもしれない。これだけアクションがある作品を“退屈”と思えてしまったのもそこに原因があったのかもしれない。
それにやってることも、ロシアのスパイがアメリカを乗っ取る。という、いかにも冷戦時代に作られました。と言うものだし、現実的なものからは随分ずれてることを感じてしまう。前提として冷戦構造があるから意味を持つ設定を、今時にやっても時代性は全く感じられず、三流のファンタジー作品にしか見えてこない。
その意味で、設定として大変残念な作りになってしまったのは確か。
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