[コメント] 喜劇 日本列島震度0(1973/日)
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江東区ゼロメートル地帯が舞台(町内名は創作されている)。区役所の地震対策室勤めの石橋、恋人鳥居恵子の父が足袋職人で「手縫いの足袋なんか流行りませんよ」と暇人のフランキー堺。区役所は来るべき震災に向けて各町内に地震対策委員設置の依頼、当町内はフランキー就任。防災訓練でやたら張り切り大活躍。運動会マートの劇伴に乗って、バケツの水被って逃げ遅れた家族の救出に向かう佐山俊二(たったかな)、火だの水だの旗で示される街道を縫うように避難して区役所から最優秀賞貰う。いかにもフランキーらしい喜劇。序盤はこういうユルい展開。
占い師日色ともゑの憂鬱に微笑んで人生をやり過ごしているような造型がいい。高利貸財津一郎とベッドにいる中盤の唐突なショットは驚きがある。中盤からは、彼女の占いで時間指定(12月1日12時)で東京への地震が予言されたにかかるドタバタ劇。町内旅行で八丈島へ逃れる(参加するのはフランキー、日色と財津だけ)も、地震は東京都八丈島だけ襲う。八丈島は観光サイドが映画受入にやる気だったらしく、宿のオバサンたちが民謡踊っているのが何か侘しく、この民宿が地震で倒壊するのは安いが喜劇ゆえ許される。
結婚前から倦怠期の石橋と鳥居の関係も面白い。麻雀に例えて配牌からイッスッソー待ちだと上手いことを云う。釣り堀でデート盛り上げようとする鳥居がいい人。これが日色の予言により、「地震が来る思うといろいろ新鮮」という、死後の眼で世の中見るような川端康成のような、新鮮なカップルになる展開がいい。明日は八丈島、東京よさようなら、灰田勝彦まで登場して「若い東京の屋根の下」を唄い、敗戦直後の焼け跡東京が回想される。「終戦は何もなくてよかった」。前夜祭ね、もう一度やり直そう。しかしご町内の面々は翌日になると日常に戻ってしまうのだった。
競艇での結婚式は掛け金を彼女が呑んで良かったという展開だが余り盛り上がらない。地震が来なかったからだろう。石橋らが逮捕されて彼女が泣いて、お勤めしてこいよとパトカーで去るラストは何か強烈で記憶に残る。借金での祝祭の責任を取って最後まで祝祭的なラストだった。
69年に一度地震が来るという説をフランキーが何度か繰り返している。地震学者で島田陽子が登場してプレートテクニクス論をぶっているのは、『日本沈没』と関係があっただろうか。江東区の河川に大きな船が縦列駐車している。あのねのねはテレビでアイドルのように振り付きで唄っていて異様(主題歌はフォーク)。NHKテレビの時報の時計アニメが懐かしかった。
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