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[コメント] パンドラム(2010/独=英)

拾い物。暗い宇宙の彼方は狂気と血でいっぱい、という、なんだ、いつものよくある『イベント・ホライゾン』かと思えば・・・(2011.8.21)
HW

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 エンドロールまで気がつかなかった、なんだ、いつものよくあるポール・W・S・アンダーソンプロデュース。って、ネタバレはそっちじゃなかった、やってくれます、海の底。宇宙船だからといって宇宙を飛んでいるとは限らない、という思いつき自体は誰でも考えそうなところだけれど、カプセル放出の話でまんまと外は真空と思い込ませるあたりなかなか巧妙かと。ただ逆に言ってしまえば、要するに、宇宙SFではなく、あくまで宇宙船ホラー(と指摘するのも、一応ネタバレ?)。地球の生態系サンプルを積んだ「ノアの箱舟」といった設定もただの思わせで本筋に絡まずに終わる(あんなラボまで登場させておいて、結構これ、予算の無駄遣いじゃないですか、プロデューサーさん?)。

 本来人間のいるべき空間を占拠してしまったミュータント集団、というのは、『アイ・アム・レジェンド』にも出てきたが、ちょっと『ゴースト・オブ・マーズ』っぽい造形(とげとげ背中のシルエットは『エイリアン』としか言いようがないにしても)や、生態の描写では、肝心の場面で単なるCGモンスターになってしまう向こうよりこちらのほうが勝るだろう。それが原子炉の周りに住み着いているというのは、ほとんど『エイリアン2』からの引用だけれど(というより、原子炉事故によるタイム・リミットという状況自体がまんまこれか)、闇の奥に群がるそのむせ返る熱気は、ほんのちょっとだけ『地獄の黙示録』? 言い過ぎなら、『13ウォーリアーズ』にしておこう。善戦していたカン・リーを、キョトンとした瞳の子どものミュータントが一撃で殺してしまうシーンなんかも、既視感たっぷりには違いないが(『ジュラシック・パーク』?)、憎らしい。なまじ人間の面影を留めていることが嫌悪感を誘うわけだ。このミュータントたちが、最初から火を持つ存在として登場するのも面白い。乗組員が自分たちの船のなかで、明かりが見えた途端、逃げなければいけないわけだ。それでもやっぱり、『エイリアン』風に宇宙船の機械的な内部構造と一体化するように身を潜めて、『ブレイド2』ばりのアクロバットな動きで襲ってくるあたりが、この映画の節操がなくって面白いところ(ところで、あなたは、いったい何だったんですか、ノーマン・リーダスさん?)。

 主人公は白人男性ではあるけれど、アクション的な見せ場は、もっぱら先述の格闘家カン・リーと、ミラ・ジョヴォヴィッチが『ディセント』しているようなアンチュ・トラウェの担当というのも、未来的かはともかく現代的か。英語を話す白人男女に生きたバッタをむしゃむしゃ食べさせておいて、言葉の通じないアジア人に「うへぇ、何喰ってんだよ?」という顔をさせるのは、笑えます。

 しかしまぁ、たどり着いた惑星の海中に早速、原子炉搭載のぶっ壊れた宇宙船を沈めてしまうとは、困った話です。

(評価:★3)

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