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[コメント] おまえうまそうだな(2010/日)

トイストーリー3』の感想で、「子供をぶった斬って、大人向けのストーリーを構築する事も可能」という事を書いた見識のなさを恥じ入る。子供も大人も満足できるストーリーを証明した本作はファミリームービーの「向こう側」へ到達した傑作である。
Master

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これまでの自分の考え方では、ファミリームービーはあくまでも「子供が満足する話」であった。子供が「キャッキャ」と喜べる作品、その意味ではストーリーの整合性なぞ度外視で、見た目がキャッチーである事に拘ったり、表面的な勧善懲悪だったり、大人が鑑賞するにはさまざまなレベルで障壁がある作品であったと思う。そもそも「子供も大人も大いに満足できる作品」というのは存在しないという前提でいた。

しかし、本作はそのハードルを綺麗に飛び越えて見せた。一見キャッチーなキャラクターが登場するが、ストーリーは「硬派」とも言えるのである。草食恐竜として育てられた肉食恐竜(ハート)が迎えるアイデンティティクライシス、命のやり取りという現実から基本的には逃げていない一連の「狩り」や「決闘」、ハートがウマソウを育て始めたころの夢に出てきた母親が放つ驚愕の一言。まかり間違えば、子供にとってはトラウマになってもおかしくないシーンも見られる。そういったシーンを「ちゃんと」描いている事に驚くのである。(もちろん血がプシャーというようなことはない。その意味では逃げているが、 別に本作は『ランボー』でも『プライベートライアン』でも『エクスペンダブルズ』でもない。)また、たまご山での母子再会シーンを筆頭にハートフルなシーンもふんだんに盛り込まれている。これは泣くわと思えるシーンも多い。それも同情や憐憫のためではない。感動であり安堵なのである。ここまでくると実写でも稀有である。

心底観て良かったと思える作品なので、ぜひぜひご覧あれ。

(2010.10.25 109シネマズ川崎)

(評価:★5)

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