[コメント] 犬の生活(1918/米)
象徴的な作劇術がドラマを際立たせるのに表現の膨らみを感じさせる映画過渡期な仕上がりの習作的作品。サイレントという現代から見れば懐古的な作品であるが故、コメディであるからこそ作品としてのクォリティを保っているといえるパッケージである。なによりも映画としての強度はチャーリーという存在が決定づけるキャラクターの力によるところが大きい。これは本作がそうであるというよりも、このサイレント時期の映画の限界の中で、映画として成立可能とする極端な物言いとしての立脚基盤に達しているということだ。言葉拙く何と言っていいかわからないが、映画の内在的なところで勝負してきたハリウッド映画は特に、サイレントという制約がある以上、脚本・ドラマといった点で作品の成否を問えないという限界点が、この時期の作品を見ていると思わずにいられない焦点である。もはやこの時点でチャーリーという映画的存在の活動記録が作品となることが確立されており、その手を変え品を変えという部分でのバリエーションの巧みさが好悪を呼ぶという、それこそ現代のやる役者変わらぬトレンディドラマ的色彩は、時代に変遷なる常套なのだということに合点がいく。そうした捉え方が成立するならば、このコメディというフィールドの逞しさを思え、チャップリンの仕事の施しが比類なきものであることにも感慨深い。流石チャップリンの誉れは、作家=俳優という自作自演のパイアニアしてのハイアヴェレージな作品力にある。それは、上梓する作品がただのトレンドやキャッシュフロー的な企図ではなく、ある種の文化的な開拓のために象られたものでることと共鳴している。その意味では、大きく飛躍するが、昨今ハリウッドムービーの良心的原点といって過言ではないだろう。
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