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[コメント] 幸せの始まりは(2010/米)

リース・ウィザースプーンに惚れ直す。笑顔が素敵な人だとは承知していたけれど、「眉根をひそめる」などして演じられる怒りや呆れ、戸惑いといった陰性の表情までもが愛しくて堪らない。オーウェン・ウィルソンポール・ラッドが夢中になる理由=自分の本当の魅力については無自覚そうなのがまたいい。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ウィザースプーンはもちろん、ラッド(バンビのような瞳!)もウィルソンもすばらしい。ジャック・ニコルソンにさえ好感を抱いてしまう。それにしてもジェームズ・L・ブルックスとは何と優しい、何と慈愛に満ちた人だろうか。たとえば、このウィルソンは決して悪く描かれない。プレイボーイであることがキャラクタの本質を成し、実際に浮気も示唆されるが、それがはっきりと画面に撮られることは一度としてない。私たちが目にするのはむしろ、ウィザースプーンに対して彼なりに精いっぱい努力している姿ばかりだ。女性からすれば看過できない面も多々あるのかもしれないが、彼は彼でやはり誠実な人、というふうに映画は描いている。ウィザースプーンが別れの際に云うように、ウィルソンに「悪いところ」なんてひとつもないのだ。だから、それにもかかわらずウィザースプーンはラッドを選ぶ、というハッピーな展開にひとさじの切なさが加えられる。境遇からすれば断然ラッドだけを応援してしかるべき私がウィルソンのことも全力で応援してしまっているのだから、私はもうこの映画の虜だ。

そして何より、たかが脇役に過ぎないレニー・ヴェニートがラッドの秘書キャスリン・ハーンに求婚するシーンが無茶苦茶に感動的だ。ヴェニートの渾身の求婚がもうすでに感動的なのだけれども、そこから「録画の失敗」というラッドらしいポカを挟み、皆で寄ってたかって求婚を再現しようとするのだから! ブルックスの慈愛は主要人物以外にも等しく注がれている。

ヤヌス・カミンスキーにしてもこれが最も優しい撮影かもしれない。柔らかな光に包まれた暖色のワシントンD.C.。

(評価:★4)

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