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[コメント] フード・インク(2008/米)

出てきたチキンが巨大だと思いだす映画。解説のアニメと劇伴がピンクフロイド風になるのが当然とはいえ素晴らしい。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







タイソン社は養鶏を変えた。飼料に抗生物質を混ぜる。かつて70日かかっていた生育は48日、しかも大きさは2倍、胸肉ばかりが大きく育つ。鶏舎は陽を当てない。大量の鶏。鶏は自分の体重が支えきれず歩けない。施設と機械で農家は会社に借金しているから文句云わない。労働者は南米の不法就労者が多い。工業フードシステムはファストフードから。1930年代に外食店「ドライブイン」誕生。マクドナルドはレストランの調理場に工業システムを導入、単純作業の繰り返し、安価な賃金、熟練不要。マクドナルドは米国最大の牛ひき肉の買い手となり、1970年代に牛肉大手5社が市場の25%占拠、現在は4社で80%。タイソン、スウィフト、カーギル、ナショナル・ビーフ。豚肉等も同様。ファストフードを食べなくてもこのような精肉を食べている。タイソン社の契約農夫は養鶏場に近づくと「カネの臭いがする」と笑う。鶏舎20棟所有。周辺にはハエが大量発生。

スーパーマーケットの食物の源を辿ると、ほとんどがアイオワ州のコーン畑に行き着いたと語る著者。「工業食品のほとんどはコーンを原材料にしている」米国の農地の約30%がコーン畑! カーギル社など穀物メジャーが法律をつくり農家に補助金が下りる。余りにも巨大なコーンの山。ケチャップ、チーズ、乾電池、ピーナツバター、スナック菓子、ドレッシング、ダイエット甘味料、シロップ、ジュース、粉末ジュース、オムツ、鎮痛剤、ファストフード、そして飼料、魚までもコーン。牛はコーンを食べるようにはできていない。食べさせるとすぐ太る。そして大腸菌O-157が誕生した。もの凄い面積のCAFO:集中家畜飼育場。牛は処分場に送られるまでずっとウンコまみれで暮らす。牛は1時間に400頭処理。この辺りの描写は『オクジェ?』に影響を与えただろう。

ブッシュ政権下で農務省長官は元牛肉業界ロビイストのチーフ、FDA(食品医薬品局)の局長は元全米食品加工協会副会長。企業のいいなり。農務省に工場操業停止の権限を与えるケヴィン法は何年も成立しない。

高カロリー食品が安いのは国の助成金のせい。スナック菓子のカロリーは小麦、コーン、大豆。所得水準が肥満の予測因子になる。2000年以降に生まれた米人の3人に1人は糖尿病予備軍。マイノリティの場合は2人に1人と。低所得の街でスーパーは採算が合わず撤退、そこにファストフードやコンビニが入るパターン。肥満や糖尿病の発生はファストフード店の数に比例するとの調査結果あり。

ノースカロライナ州、スミスフィールド社の豚肉加工工場は世界最大の食肉処理工場、隠しカメラで処理フロア(英語でthe kill floor)一日3万余頭の処理、時間2千頭。牛のようにぶら下げられ、労働者は単純労働。100年前は東欧移民の仕事、のちに労働条件は改善されたがファストフード全盛の需要増で再び悪化、組合はなく不法移民を率先雇用、メキシコのコーン移民が多い。アメリカの安いコーンで失業したメキシコ農民たち。食肉企業IBPやモンフォートは輸送バスを出して率先して雇用。不法移民が問題になると政府は企業ではなく労働者を取り締まった。豚200頭と格闘する仕事、死者多い。安価な販売価格は労働条件の犠牲のうえにある。15年かかって労働組合組織。スミスフィールド社は取材拒否。

1980年代、裁判所は農作物に特許を認めた。(枯葉剤やラウンドアップで有名な)モンサントの農薬耐性大豆は特許品、1996年はシェア2%、2008年には90%を占めるに至った。種子を保存すると告訴。元軍人みたいなのが雇われていて尾行。それまでの種子使っていても、モンサント製でないと証明が求められる。裁判費用は100万ドル(他の例だが、訴訟費用が続かなくなり和解を強いられる件がある)。昔は公立機関で開発された「公共の育種は過去の話」。「種子からスーパーまで彼等が大豆を握っている」。モンサント社は取材拒否。

ニュー・アルケミーの活動からオーガニック会社の立ち上げ、ウォルマートとの提携までが語られる。消費者の賢明な商品選択と、チップスより人参が儲かる政府の施策転換、それに巨大産業とも闘うこと、タバコ産業も転換した、と語られる。ブルース・スプリングスティーンのThis Land is My Landで終わる。

その他の断片も情報の質が高い。トマトは青いうちに摘まれてガスで熟成。食品の遺伝子組み換えは70%。現在、アメリカの農民は平均126人を雇用するとのこと。遺伝子研究。豚の人工授精方法。動物愛護協会が問題視すると云う個別豚舎では豚がまるで元気がない。大量の石油消費。普通の牧畜がいかに地球温暖化を抑止するかも詳述される。コメントの記録はDVDの付録映像を含む。

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