冒頭のバレエシーンでのハンドカメラとライティングは美しい。これから始まる悲劇の予感とも取れた。また設定がほとんどバレエ劇場と自宅で構成されているため、全体に閉塞感を持たすことに成功している。だからドラッグナイトのシーンが変質への契機として際立つ。 ナタリー・ポートマンも確かに体当たり演技で良かったが、ニナの母ちゃん（バーバラ・ハーシー）の存在が極めつけ。後半は一番まともな事を言っていたと思うがそれが怖くなってくる。最後は普通に立ってるだけで怖い。

しかし徐々にすべてが現実か幻想か分からなくなり、ここまで来ると逆に何でもアリのホラー映画になってしまい興ざめとなった。しかも爪を剥く、ピックで刺すとか生理的にイヤな描写を入れ過ぎ。この題材ではもう少し段々と精神的に追い込んでいく方法はいくらでもあったろうに。こうなるとラストも「死」か「夢落ち」しかないだろうと、途中から勝手に想像していた。そしてヒッチコックのようなエンディング。

物語・映像の良さと、描写・構成の悪さのアンバランスさが際立つ。