[コメント] スタンド・バイ・ミー(1986/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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キングはデビュー作の「キャリー」を読んで以来の大ファンで、本作も原作の方を先に読んだが、その出来にかなり驚かされたもの。特に最初に読んだ春編「塀の中のリタ・ヘイワース」は、いつホラー展開になるのかと思ってたら全然そうはならなかったのが意外だったが、単品そのもので面白かったので、そのまま夏編、秋編と読み進めていく。本作の原作となった秋編「死体」は出来としてはキングらしさの強い子供の話だ。と言う印象でしかなかったが、これが映画化されたら驚いた。映像の強さってものがよく分かったよ。
小説の出来も良いのだが、胸に迫るものはさほど高くない。これは1950年代のアメリカというのが分かっているという前提で書かれているためだと思うのだが、それは日本に住んでいる私にとっては別物。文章では描写に限りがあるのだ。
ところが、それが映画になると、あたかも彼らの冒険が自分の経験のように思えてしまうから不思議なもの。子供の頃、悪友とした武勇談や危険な遊び(と言っても人の家で柿盗んだり、工事現場の工具をくすねたりするとかいうレベルだが、汽車が来る時刻に線路でたむろして怒られたことなんかも、フラッシュバックのように思い出されてくる)。今やその友人達とも完全に没交渉になっているが、その頃の思い出と、切なさも感じ取ることが出来る。本当に強烈なノスタルジーがこの作品にはあった。
一つ一つの冒険があたかも自分の経験のように思える。それはライナー監督の上手さによるものだが、きっとこれは監督自身が子供の頃にした思い出が強烈に残っていたのだろうと思わせる。その思いがあるからこそ、これだけのものが出来たのではないかと思えてくる。
確かに子供の冒険なんてものは、大人から見たら他愛ないものだ。だけど、その他愛のない冒険こそが子供達をつなげていき、大きな思い出を残すもの。他愛のないいつもの風景をとびっきりの美しいものに変えるのは、友達と一緒だから。大人になったら得ることが出来ない風景がそこにはあった。アメリカとか日本とか関係なく、自分自身のノスタルジーに浸り込めた瞬間、この作品は忘れ得ぬものになった。
だからこそ、最後の大人になったゴーディが号泣するシーンで時分自身も泣けたし、タイトルとなったスタンド・バイ・ミーの曲も沁み入る。
日本人でさえはまりこむアメリカの風景。当然アメリカでは大きく受け入れられたことだろう(キング自身がこの映画を観て号泣したという逸話もある)。
尚、本作はフェニックスの名を一躍有名にさせたが、そのフェニックス自身が23歳の若さで死んでしまった。その事でも思い出深い作品となった。
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