[コメント] 日輪の遺産(2011/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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本作の前半は感じいい。生真面目な勤労動員の女生徒たちと、戦争に諦念を抱いていた堺の触れあい、ぐらいの話で纏めればそれなりのものだっただろう。本作の一番いいシーンは女学生たちが揃いの真白のシャツで堺らに笑顔で任務完了の別れの敬礼するショット。いろいろあるけど集団主義が一番美しいよねと『一番美しく』を回想するようなショットだが、まあこの位なら誰しも許容範囲だろう。
それが後半、無理矢理な事件が多発する。秘密を知った女学生たちの暗殺指令という展開は突飛だし、事前に知った女生徒たちが敗戦を嘆いて(?)青酸カリで集団自殺してしまう(結果が命令通りになる)のは何故なのか更に判らない。ユースケが後追いするのを中村獅童が認めてしまうのも判らない。これは敗戦直後のトチ狂ったヒロイズムでしかない。しかもフィクション。映画にする話なのだろうか疑う。
序盤、軍が工廠から徴用するはずの勤労奉仕の工員たちは、八千草の若い頃の女生徒たちだったといういいギャグがある。一番美しくの面々は例の「比島決戦の歌」を合唱する。♪陸には猛虎の山下将軍 海に鉄血大川内 見よ頼もしの必殺陣 出て来いニミッツマッカーサー 出てくりゃ地獄へ逆落とし。
これを大蔵官僚がマッカーサー(俳優はなぜか東野英治郎さんに似ている)に直接唄って、いつか日本の製品がアメリカを席巻するでしょうと演説してピストル自殺する。これなんかトンデモ展開である。バブル期に「日本はアメリカを征服した」云々とエレクトしている保守が大勢いたが、ここにあるのはこれと同列の発想でオゾマしい。この自殺者を、こいつらの魂は鋼鉄製とマッカーサーに褒めさせる自慰史観がまた下らない。とりあえず助かるかも知れないのだから、ホッタラカシにせず救急班を呼んでほしい。
最後は少女たちの遺骨が財宝を護っている、などという「感動」が謳われ、それが反米気質な処があるのが美点と云いたい処なのだが、所詮この財宝、そもそもはフィリピン独立のためマッカーサーが蓄えたものを日帝が盗み出したものだ、という処でバカバカしさがある。
考証はしているのだろうから、陸軍省でシェークスピア引用する軍首脳など、存外幹部は英文学かぶれだったのだろうか、という発見がある。日本は反撃しアメリカ大陸に上陸するという堺に女学生のひとりは、アメリカの女学生も私たちと同じ目に合うのか、戦争を止めるのはそれでたくさんの人が救われるのなら立派なことだ。しかしこの論理、それがアジア向けではなくアメリカ向けのアナウンスなのが、いかにも弱い。
端々の演出もガッカリさせられるものが多い。冒頭、卒業式の壇上で死んじゃう八名信夫とか、堺が意見具申に来たら切腹の最中だった上官の柴俊夫とか、子供ができたと麻生が告白する収束とか、こういうバカバカしい演出を決まり事のように何故するのだろう。本作はまるでいい処なしである。
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