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[コメント] ミラル(2010/仏=イスラエル=伊=インド)

このレンズへの光線の取り込みはもちろん美しいと云って差し支えないものだが、ジュリアン・シュナーベルエリック・ゴーティエのカメラ技巧は浅ましさすれすれで、私の許容範囲を踏み越えかけている。これをミラルの波瀾万丈の個人史として見る限り、決して目新しい物語ではないとも云わざるをえない。
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だから私はフリーダ・ピントよりも、必ずしも多くが語られているわけではないヒアム・アッバスの物語にこそ強い興味を覚える。あるいはそれは純粋に演技者の度量のためかもしれない。とりわけ中年期を演じるアッバスには「現在世界最高の女優はこの人ではないか」とまで思わされる。その無私的自己犠牲的善行に対して物語は何の動機付けも施していないにもかかわらず、そこに満ち満ちた説得力ときたらどうしたことだろうか。脚本に拠らずしてキャラクタに説得力を与えることができる演技者、それはロバート・ミッチャムハンフリー・ボガートと同種の才能の持ち主にほかならない。そして彼女の死とともに物語が終わらねばならないことにも示されている通り、映画『ミラル』を背後から支え続けているのはヒアム・アッバスその人である。

(評価:★4)

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