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[コメント] アマチュア(1979/ポーランド)

夢を追いかける男とその妻、男の仲間に起こる 「ごく自然」な人間関係の変化を描き、「表現すること」と「省みること」の接点を浮き彫りにした傑作。
レモン汁

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







キェシロフスキ監督作品のなかでは、社会的背景の割りと薄い、入りやすい作品と思う。

主人公の男には臨月の妻がいる。

生まれてくる子供の成長過程を記録する為に旧式8ミリカメラを2か月分の給料をはたいて用意する。

カメラを持っていることから、会社の資金で映画を撮るよう要請がある。

「動くものなら何でも追う」男が撮影の対象としたものは、「事実」。

タブーな事柄にも積極的に向かい、その「ありのまま」の視点が映画関係者に評価され、

知名度が飛躍的に上がる。

一方、穏やかな生活を望んでいた彼の妻は、生後まもない娘の育児に追われ、

夫が過程に見向きもせず「映画バカ」になっていくのを見て、空しさを募らせ、

結果的に夫婦仲は破綻する。

それでもカメラを離そうとしない男が、結果捕ろうと思った対象は・・・・・

映画の魅力にとらわれ、カメラを握った「アマチュア」の人間がレンズ越しに見る

自分の姿。

何かを創る、何かを表現する、アウトプットする

ということにより、間違いなく、避けようもなく、

鏡越しに自分の心を映し出されるリスクがある。

アマチュア監督の監督としての成長過程を追うことにより、

そのテーマが如実に伝わる、とても繊細な傑作。

(評価:★5)

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