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[コメント] マネーボール(2011/米)

映画は傑作。原作本は野球の本だが、それを超えて考え方の型を与えてくれる本なので読みましょう。そして、統計に基づいた野球の本の続編として”ビッグデータ・ベースボール”という本が有り、マネーボール以降の動きも判ります。こちらも読みましょう。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ブラッド・ピットが今まで見た事も無いような内省の表情を出していて驚いたが、これは監督が余程演技をつけるのが上手いのだと考える。私が見た以降の作品でこれに匹敵する演技は無かったし。

勿論この映画で描かれる勘というものを運営から切り離すのは合理的ではあると思う。ただ、ノウハウは真似されるものなのでマネーボールの手法を使った別の合理的なレッドソックスに負ける。皆ビーンに感情移入すると思うのだが、全員が野球のGM(金持ち)になれないし、なる必要も無い。ただ、不公平なゲームをどう闘うかということは一般の人にも共通なテーマ。

この映画にしたって、切られたスカウト側から見るか、GM側から見るかでも見える風景は違う。勿論スポーツの頂点の世界の話なので一般の世界とは違う部分も大きい。ここでの競争を基準に世の中を考えて欲しくは無いのだが、ただここで描かれる競争がどのように強迫観念を産むかは考えた方が良い。

コンピューターが人の仕事を奪って緊縮の要因となる光景は昔からあった。ロータス 1-2-3が登場した時ホワイトカラーの経理の仕事は相当消滅した。日本だとエクセルなのかもしれんけど。コンピュータによる合理化は人の仕事を減らす類のものも多い。この傾向は少しづつ先進国の格差を深めていった。特にホワイトカラーの仕事を減らすのはコンピューターは得意だ。山形さんと堀江が対談してるyoutubeの動画では、殆どのホワイトカラーの仕事は残らないとか言ってる。(脅し文句なだけで、実際はコンピュータと人間の性質が違うので、出来ない事も一杯あるだろう。)ホワイトカラーにコンピュータで合理化を持ち込むやつは社会の持続という意味でヤバいものが多い。逆に言えばブルーカラーの作業にロボットを持ち込んだりするのはロボットを作る仕事の事とか労働強度削減を考えれば、こっちにもっと投資しろとは思う。ロボットで無くとも圏央道が無かったら運輸業の人はもっと苦しい事になってた。道路って作る難易度が低くて良く使われるものだ。第二東名が終わったら第二中央自動車道を作って南アルプスの下を通せば新幹線同様甲府や飯田や中津川の下支えになる。(運輸業の労働強度も減らせる)新幹線だって金使って甲府駅や飯田駅直結にしろよと思っている。橋本だけ直結じゃ地方の下支え効果が薄くなる。

分裂した野党のイデオロギー側の党首はネットに反応して反緊縮と言いだした。それなら話が早い。ネットで貴方たちの経済政策が駄目と言われてた理由は今までの野党の経済アドバイザーの二人がどう読んでも緊縮としか読めない事を言ってたから。そこをどう見てもこのアドバイザーは反緊縮だと言い切れる人を置ければ反応は変わる。この人の意見に基づいて経済政策を行います。自分の意見では無く、専門家に任せます、それが公約ですと言えば反論も封じ込められる。勿論一部がためにする感じで与党しかなしえないとか、今までの行動で信頼出来ないとか言うんだろうが、そこは反緊縮を唱える皆が望んでいる変化であることを忘れてはいけない。

メキシコでは貧困者にお金を配る政策をプログレッサと言うらしいけど、野党はその真似をしたらメンツが立たないのでオポルトゥニダデスと名前を変えたらしい。名目を変えるだけと思われるのが嫌なら野党が現在の3倍(それで貧困層に金配るのと公共事業を”両方”やれば良い)以上の金で財政政策を行うと言えばそれはもう”実際も”アベノミクスの真似じゃない。だから真似等という必要は無い。”コンクリートから人へ”から”コンクリートと人へ”に変えたとしても元のコンセプトは一切崩れてない。だから矛盾足りえない。

財政政策を3倍以上の規模で行うと言った時に過去を問い詰める必要は無いとは反緊縮派は思っている筈。あと反緊縮以外でも労働問題を追求すれば、そこで”もっとやれ”という人のほうが多い流れになっている。労働問題に関しては共産党系の主張すら取り上げる人達がいることを忘れてはいけない(そこに関しては共産党を認める他党派の人がいるってことでもある)。積極的に労働者の権利を追求した政党の色を作り上げて下さい。(そこまでやれば相手は消費税上げるとか抜かしているんだから戦えない訳が無い。)

更に言っておくと先鋭化したイデオロギーが右左問わず怖いというのは真っ当な考え方で、別に私はそこに反論するつもりは余り無い。ただ、企業のバックアップで無くても得票するためにイデオロギーがアメリカで使われたという事だ。(実際バーニー・サンダースは寄付で選挙戦を戦っている。日本の場合、政党への寄付は政党助成金がある以上そこまで必要は無いと思うが、労働問題を書いてるライターの著書位買い支えたほうが良いと考えている。)しかし、イデオロギーだけのために政治を行わず、反緊縮を行うために経済学の理を使うならそれに相応しい学者を迎えて、その知見に従うと表明する事が不安な人のため絶対に必要。私は言葉の喧嘩が強いという点でクルーグマンが良いと思っているのだけれど、それだと首相と会っているので与党の色が付いているという見方があるのかもしれない。ただ、誰が見てもケインジアンである人を置く必要がある。そうすると党首が自身が反緊縮と主張した事において”客観的に”筋が通る。

逆に金主や企業がコントロールするエスタブリッシュメントによる政治行動が今回あったのだけれど、何故ああいう党が大都市から出現するかと言うと、社長や社長気取りの人、社長から金を貰ってその代弁をする人が一番多い場所だから。で、地方対中央政府なんて言って、そういう人種以外を取り込もうとするけど。

そして金融政策だけが行われることで増えた賃貸物件を作った地主がエスタブリッシュメントとまで言えるかというと、どうも彼らの投資のリスクが低いとは言えない。あの30年一括借り上げの賃貸物件は30年間お金を返さないといけないので普通の人が就職してリストラされるまでの年数まで経営すると破たんする人も多い。でも地銀(静岡東部のが評判悪い)や一括借り上げの会社は担保があるので損しない。そういった金主がルール作って支配する世の中。で、もし何かあっても銀行は影響が大きいから潰せない、となる。お金貸してる人が一番政治力含めて強いのはどこも一緒。

そもそも財政政策をやらないと金主がリスクがある事業にお金を貸すというとろこまで到達しない。で、なんで金主が金融政策と財政政策を同時にやるのを嫌がるかというと、偉い人はこう思っているという話をまた聞いただけなのだが、金主はどうやらお金を借りる事に関してモラルハザードが起こるのが嫌らしい。金を貸した相手が返さないのが常識になるのが嫌なんだって。でも適度なリスクを負える社会じゃないから儲かるようにコンピュータの力を使って相手を徹底的に出し抜く取引(マイケル・ルイス”フラッシュ・ボーイズ参照”)をやったり、労働者に利益を出すまで家に帰るなとか言えちゃう社会が出来てしまう。(関口房朗の金持ちぶりを浅草キッドがいじったのとか、破産したマネーの虎の社長が派遣業だと復活出来てしまうあたりとか見ると、派遣はリスク少なく儲かって、上手くやれば大金持ちになれるのが判る)

金主がリスクある事業に対して投資して(成功した時にリターンは勿論大きい)お金が一周すること。そしてインチキな金儲けが規制される(派遣会社の取り分を規制するって言ったら世の非正規に人気出ると思う)。その上で適度な競争(この映画のような知識や統計を使ったりもして)が必要と考えている。言うまでも無く難しいんだけど、ね。

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