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[コメント] 海洋天堂(2010/中国)

むろん観客のハンケチをしとどに濡らすべく構想された物語にすぎないのだけれども、ジェット・リーの発する「魚に生まれていれば幸せだったろうに」やら「父さんは海亀だ。ずっとお前を見守っている」やらの台詞が私には嘘っぱちに聞こえず、大いに感じ入る。手製の亀甲を背負って溺れかけるリーの姿よ!
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息子ウェン・ジャンに対するリーの「教育」を、鶏卵の調理法やバスの降り方などに留まらず、もっと多岐に亘って、もっと微に入り細を穿って描いてくれたほうが私の好みではある。どうして映画において「教育」が感動的なのかと云えば、それが端的に「変化」だからである。変化とは一定の時間と空間を要するものであり、映画とは時間-空間表現にほかならない。人が人を変化させるところの教育。だからそれはときに美しく、ときに怖ろしく、不気味なものでさえあるだろう。それを映画表現として支える基盤は細部の連なりでしかありえない。ゆえに私はこの映画にもっと細部を求める。

リーに関しても一言だけ述べておきたい。この映画から「アクションスターの演技派への挑戦/転身」という結論を導き出すのは適当でない。「アクションスター」とは映画における感情表現が身体表現とまったくのイコールであることを知っている人種を指す。したがって、ジェット・リーは純然たる映画俳優、それ以上でも以下でもない。「アクション俳優」と「映画俳優」は相互に置換可能な代替語である。

(評価:★4)

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