[コメント] ALWAYS 三丁目の夕日’64(2012/日)
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『ALWAYS 続・三丁目の夕日』から5年。すっかり成長した三丁目の住民たちがスクリーンに戻ってきた。なんかすっかりおばちゃんと化して、目を細めながら「よく帰ってきたね」とか言いたくなるくらいに懐かしく思ってしまうわけだが、同時に「これが山崎監督の帰ってくる場所なんだな」とも思えてしまう。山崎監督は元々VFXの専門家で、新しい表現を挑戦的に作り続けている人でもあるのだが(興行的には失敗したとはいえ、『SPACE BATTLESHIP ヤマト』も又挑戦の姿勢がはっきり見えていた)、そんなチャレンジができるのも、シリーズとして本作があるから存分に挑戦ができるとも考えられる。意地の悪い言い方をすれば、安定路線をバックに持つというのは、監督として大きな余裕を持つのだなとも思える。だからこそどんどんこういった安定した作品を作りつつ、飛び抜けたCG作品を作ってほしいものだ(そう言えば前にテレビで宮崎五朗監督との対談があって、その時とても歯切れは悪かったが、「(むにゃむにゃ)が許してくれるか、(むにゃむにゃ)したら、是非原作版『風の谷のナウシカ』(1984)を作らせてほしい」とか言ってたな)。
それで本作だが、ことさら大きな事件が起きるわけでもなく、二つの家庭を中心にして家族の危機が訪れたり、仲直りしたり、新しい家族ができたりしている、いわば当たり前の人間の営みを描いていくことになる。この姿勢が全くぶれてないので安定したおもしろさが提供される。物質的な豊かさが上がることによって、特に若い人間はまっすぐに金とそれに付随する富を求めるようになり、あるいは流行に心奪われるようになって、親よりもそちらを優先するようになっていく。前作前々作はそれがまだ高見に達していない微妙な時代だったのに、本作は本来の日本の風景に近くなってきたって事だろう。この辺りから徐々に日本はバブル経済へと入っていくことになり、世界中で起こる紛争を尻目にどんどん経済大国になっていくことになるのだから。
ただ、こういう作りは現在の邦画では単純な人情話が大変少なくなっているので、かなり貴重な作品になっているのは確か。かつて男はつらいよシリーズはリアルタイムでそう言った懐かしい風景を使えたものだが、今やCGをフル活用してようやくそのレベルに至ると考えるのはやや寂しいものはあるが、数年に一度で良いからこういう作品が作られていけば良いとも思える。
本作では今から40年前ほど前になってるので、丁度私の世代辺りになると、懐かしいと言うよりも「こういう事もあったよな」という気分にさせられるし、当時の漫画雑誌の事なども見えたりして、それはそれで興味深いものもあり。
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