胸糞映画として紹介されている本作だが、事件の結末よりも「間抜けな警察」と「足を引っ張る女」の愚かしさをこれでもかと描くお馴染みの展開のほうにうんざりする。最近はそうでもないのかも知れないけど、韓国映画ではこういう描き方が好まれるのかなぁ。

仕事バカの売れっ子キャスターの夫に相手にされず、子どものダイエットにいれこむ妻のすれ違い生活が、子どもの誘拐をきっかけに衝突を繰り返しながら一つになっていくかと思いきや、犯人に振り回され何の進展もなくひたすら憔悴しきっていくだけという、事実どおりとはいえこの鬱々しい展開で最後まで見せてしまう脚本、演出は凄いと思う。犯人に「赤い服を着てこい」と言われ、たくさんドレスのあるクローゼットをひっかきまわすが赤地のものだけがなく、冬用のコートを着ていき、通行人に「こんな季節にコート着てる頭のおかしなおばさん」呼ばわりされるのを意にも介さず、必死の形相で前に進む妻の描写の、悲哀を超えてもはや無常感を感じさせるところなんかは、恨のバックボーンを持つ韓国ならではの真骨頂なのかも。