[コメント] 戦火の馬(2011/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
小林信彦さんの「黒澤明という時代」という本の中に野村芳太郎さんの洞察力について書かれている部分がある。
野村芳太郎さんは黒澤明監督の助監督を二度勤めた経験があって、黒澤明監督の力量を良く知っている人である。
その彼が黒澤明について語った一言に
「あの人は橋本忍と出会ってはいけなかったんだ。」
というコメントがあって、かなり衝撃を受けた。
つまりこうだ。
黒澤明は『羅生門』や『七人の侍』を作らなかったとしても十分に世界で通用する作家として認められていたはずだ。
ところが『羅生門』がヴェネチアでグランプリを受賞したりしたものだから、自らの作品構成にどうしても「世界の」というレッテルを貼ろうとして本来黒澤明が放つべき志向と違う方向に作品群が向いてしまったのではないか。
という仮説を唱えているのだ。
言われるまでもなく、黒澤明作品は初期から中期、晩年と『トラ・トラ・トラ』がもたらした悲劇的な状況などを踏まえ、大きくぶれた。
野村芳太郎監督の洞察力を物語る見事な一言だと思う。
そしてその野村芳太郎さんが言ったコメントで印象的なことがもうひとつあって、それは彼が『JAWS』を見たあとのこと。
「僕はもうスティーブン・スピルバーグの作品はこれから見ないだろうね。」
なぜか?
「映画監督を一生やったって、いい作品は一本できるかどうかだよ。だから彼(スティーブン・スピルバーグのこと)には、この『JAWS』が最高で、これから先は何を撮ってもこれ以上のものはもうできませんからね。」
言いえて当たっている。
スティーブン・スピルバーグはもう終わった作家なのだ。
生前の野村芳太郎監督はJAWSを絶賛する傍ら、スティーブン・スピルバーグの未来まで当ててしまったのだ。
それを納得する愚作だった。
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