[コメント] ドライヴ(2011/米)
騙されたと思って一度観てみたら、5分も待てずにその虜になることは間違いない快作。
主人公は寡黙なドライバーである。昼間は自動車の修理工や映画のスタントマンとして地味な生活を送っているが、夜には強盗の手助けをしながら暗黒の闇を走り続けている。これを演じるのが『きみに読む物語』や『ブルーバレンテイン』で知られる若手の注目株ライアン・ゴズリング。甘いマスクの裏に敵と見れば手段を選ばない凶暴さを併せ持つ魅力的な男を鮮やかに演じ切っている。「5分だけ待ってやる」というキメの台詞もたまらないが、愛する女性のためには自らの命をもかえりみない純粋さが胸を打つ。が、決して単純には事が運ばないところがこの手の映画のいいところ。終盤には目を覆いたくなるような過激な殺戮シーンが繰り広げられる。
それらのシーンにナイフという古典的な凶器が数多く登場するのも本作の特徴のひとつであるが、とにかくその扱いが素晴らしい。おそらくニコラス・ウィンディング・レフンは、本当に痛いとは、またその痛さという感情を映画的に表現するということとはどういうことなのかを知り尽くした男であり、その見せ方、音を駆使した生理的にギリギリのところをいく映像表現は、スタイリッシュでありながら一種の快感をも覚えてしまう危険性をも伴っている。こうなってほしい、いやいや、そうはならずにいてほしいという相反する願望の狭間をいくラストも見事だ。
その他、珍しく悪役を演じたアルバート・ブルックスの貫録や、主人公でなくとも救い出してやりたくなるようなキャリー・マリガンのキュートさなど、ここには書き切れない魅力の詰まったこの映画、騙されたと思って一度観てみたら、5分も待てずにその虜になることは間違いない。
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