[コメント] 晴れ行く空(1927/日)
保険年金による不幸の解決が志向され、物語構造に興味のある者全てを驚愕させる逓信省簡易保險局PR映画。監督は城戸四郎のペンネーム。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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弁士の説明によると、最後に保険年金に入って万事解決というPR映画は幾つもあるが、唐突な収束のものが多い、本作が優れているのは途中で加入する前振りがある処だとのこと。さすが脚本重視の城戸作品というべきだろう。
父は子を親無しと悪ガキにいじめられ、「坊ちゃんは親無しじゃない」と慰められ、親が引き取りにきて解決、という話はいかにも旧民法。子役は小藤田正一、最後に保険に年金があれば鬼に金棒!などと云っている。しかし、石山龍嗣が保険を買えたのは会社で昇進昇給できたからであり、保険だけで解決する話でもない、という気もするのだった。
この方法論はここでは他愛ないが、『日常の戦ひ』(44)みたいな戦時国債勧誘に洗練して応用されたのだから侮れないだろう。
松井潤子が映画スタアになるのだと「松竹鎌田」に入る件は実に面白い。ゴロツキみたいなのが大勢屯している撮影所がリアル。海岸の撮影休憩で老婆の話聞いて改心するのだが、内緒でキャメラ回す監督がハンチングにニッカーボッカーズのスタイルで、後に戦前の映画監督をパロディにするときの格好そのままなのだ。実に興味深い。監督が老婆を海に突き落とせと云う弁士がいいギャグだった。また、斎藤達雄が深夜の公園で松井に振られる助平を好演している。
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