[コメント] ゲーテの恋 〜君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」〜(2010/独)
まず映像が文句なしに美しい。ドイツの田園風景。それはまるで色濃い印象派風景画であります。そこに繰り広げられるある一つの恋愛話。それは世に数ある毎日どこかで起こっているただ単なる恋愛話なのだが、死をも決する人生上の嵐でもある。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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いわゆる体を焼け尽す恋愛を取るか、安定した結婚生活を取るかという女性から見た恋愛観が目立たないまでもこの映画では重要なテーマだ。
彼女はこの恋が彼女の人生のすべてを全うするものではないことを知っている。結婚相手が好きであろうがそうでなかろうが、彼女には今現在沸々と湧きおこっているこの恋が、人生を決するものでもないことを彼女自身が一番よく知っているのだ。
勿論目の前に敷かれた安定した生活、一族郎党への愛情、経済事情も基本的には伏線としてあるが、それよりこの燃え尽きるような恋が永遠のものではないことを彼女は知っている。
勿論男も分かってはいるのだろうが、そんな生活上のことより、この恋愛の苦しさ、つらさが、生きることより死を選んでしまうほどの、そんなほとばしる恋愛の重さの前にただおののいているだけなのだ。
男はそれを小説に昇華することによりやっとのこと命をながらえる。そしてそれはつまり青春ということなのだ。そういう意味では女はわけ知り乙女であり、男より少々大人であったということになる。
この映画の現代における意味ということになると少々疑問ではあるが、でもこの一編のストレートな恋愛映画は逆に現代ではめずらしくなっているのではないか。そういう意味では現代であるからこそ逆に希有な映画であるとも言える。
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