[コメント] 血まみれギャングママ(1970/米)
少年2人と大人の男が追う。捕まえられて押さえつけられる。実の父親と兄2人のようだ。泣きながら歩く少女。ウィンタースのナレーションで「息子が欲しい。何でも云うことをきく息子を」。変なオープニングと思うが、この映画、こういうキャッチするシーンに溢れた良く出来た作品だ。
長じて息子が4人。みんな普通じゃないが、長男ハーマンを演じるドン・ストラウドが娼婦モナ−ダイアン・ヴァーシからフリークと呼ばれる一番キレるキャラ。あと次男(?)ロイド−ロバート・デ・ニーロも本作時点で充分目を引く。彼が湖でレンブラントと名乗る若い女性−パメラ・ダンラップを優しく優しく恐怖におとしいれるシーンは出色の出来だろう。三男(?)アーサー−クリント・キンブローは書物好き、というシーンがあって、次にママと銀行を襲撃する場面が繋がれるギャップの演出も良く出来ている。四男フレッド−ロバート・ウォルデンは刑務所で同房のケヴィン−ブルース・ダーンに犯されたのだと思うが、このあたりは巧みに省略される。
こういったシーンの省略がけっこうあって、繋がりが悪い部分が目立つという意見もよく分かる。例えば、冒頭近く、夫を一人残して息子4人と盗んだ車で旅に出たママ−ウィンタースたちが、唐突に普通の家で暮らしているといった繋ぎ。あるいは、置き引きで捕まったハーマンとフレッドを、いつの間にか銀行強盗で得た金で釈放させていて、母子5人に加えて、ケヴィン−ダーンとモナ−ヴァーシも一緒にギャング団になっているという繋ぎ。しかし、こういうブツ切り感のある乱暴な編集も本作によく合っていると私には思えて来る。
また、勿論、ウィンタースによるブラディ・ママの迫力ある造型が圧巻だが、一方で、息子たちの(特に長男ハーマンの)、父親のことを忘れられない心情が一貫して描かれている。これが本作に奥行きを与えている。宝石店で、いったん殺そうとした店員を、父親の目に似ているという理由で見逃す。誘拐した資産家−パット・ヒングルに施した目隠しについて、絶対に取ってはいけないとママから命令されたにも関わらず、目を見たいと云うハーマン。
そして、ラストシーケンスの銃撃戦もよく見せる。ズームとストップモーションの多用は私の好みではないが、激戦中にフレッドが一度ママを撃とうとしたり、ハーマンがママの目の前で、まるで見せつけるように自分の顔をマシンガンで吹き飛ばすといった演出。この銃撃戦を近所の人々がピクニックみたいに楽しそうに見物する様子が挿入されるのも効く。撮影は後に『チャイナタウン』『ブラック・サンデー』を撮るジョン・A・アロンゾで、彼の長編撮監デビュー作のようだ。アロンゾにこのチャンスを与えたことも、コーマンの大きな功績の一つと思う。
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