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[コメント] 地球の静止する日(1951/米)

「エイリアン」=「インベーダー」の定式を見事に打ち破った快作。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 数々の画期的試みを盛り込んだ、映画にとってもエポック・メイクな作品である。この時代にこれだけの作品が作れたとは信じられないほど。当時赤狩りの真っ只中にあって、核による軍拡競争を否定したこと。主人公を人間ではなく宇宙人の方に取ったこと。エイリアンは地球を攻めてくるものだと言う概念を破壊したこと。何よりSF映画にこれだけの完成度を持たせたと言うこと。どれを取っても「よくぞ作った」と思わされる出来である。

 宇宙人クラトゥがやってきた目的は人類に警告を発することなのだが、彼にとっての本当の目的というのはむしろ平和的に地球人を知るために来たわけであり、町にとけ込んで一般の視点から人間を見ようとしているのが特徴。むしろ彼を追う人間の方が非情であり、その中で頼れる人物や、愛すべき人物を見出していくと言うクラトゥの視線で物語が進行するのは素晴らしい。後に小説や漫画と言った媒体でこのパターンを何度か見たことがあるが、それらもこれがオリジナルなんじゃないかな?更に彼が本当の力を見せ、地球の全ての電気を止めてしまった時、「病院や今飛んでいる飛行機だけは除く」と言っている。自分を殺そうとした(事実殺されてるんだけど)人間に対するこの寛大且つ人道的な措置にはほとほと感心。よくもこんな台詞を使わせたものだ。

 一方、劇中のSF的要素に目を向けると、これはこの時代だから致し方ない部分なのだろうが、特撮部分はチャチ。受け手側のイメージで補足しないと理解できない部分も多い。まあ、これもそれだけ受けての方のレベルを信用していると言うことでもあり、小気味よし。それになんと言ってもあのゴートの存在は大きい。あの存在だけで他の全ての要素に目を瞑っても良いくらい。無機的な、圧倒的な力を表現する最もうってつけな存在だった。

 この作品はビデオで観ることになったのだが、てっきり私は宇宙人によって全ての電力が止められてしまい、そこで生き残りを賭けた闘争劇が演じられるのとばかり思っていた。綺麗に、そして気持ちの良い裏切られ方をした作品。勿論最高点は当然。

 ところでこの原題「The Day the Earth Stood Still」は「エヴァンゲリオン」でパクられていて、題を見て思わず喜んでしまった記憶も…

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)Orpheus kiona ガブリエルアン・カットグラ

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