すべてのカットに無駄がなく物語の血となり肉となっている。美しい作品。その点においてマイナス面はおよそみつからない。

子育てを含めた人間などの一生についての物語であるといった、監督談やら批評家談はまったくもってその通りである。が、ここでたとえば、脚本家は「母親」のリアリティにこだわりすぎる自分を映画として成り立たせられるように方向修正してくれたと言う。まったくごもっともで、母親層のうち一部からは「リアリティねぇよ」って結構つっこまれてるし、まったく同感だ。 「人と違っても自分の道を行く」物語でもあるのだが、監督は「マイノリティ問題を書いたつもりはない」という。一部マイノリティからの「リアリティ欠如」「表面的」といった批判、私は同意する。が、批判は批判、その人が楽しめなかったのはやむを得ない、がまぁそれはそれ、映画の質を落としているわけではなく、好意的にみているファンも実際多い。 「手のかかる子ども二人かかえて、突然あんな田舎に行って畑まで作って生活するとか無理に決まってるじゃないか」って類のよくきく批判もまったくそう思う。ハナはまぁたくましかったんだろう（肉体的な意味でも尋常じゃなく）。山の主の存在もなんか表面的だなぁと思わなくもない。 父親狼もちょっと身勝手すぎる男だしねぇ。

…とそんだけ文句をつらつら重ねても美しい物語として最後までうっとりしてしまうような、それだけのち密な映像と音（BGMもSEも声優の演技も！）による語り。いいじゃないですか、こういう映画も。

私はこういう映画は、好きだ。