[コメント] るろうに剣心(2012/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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ワイヤーアクションは本当に、這い回るGか悪霊とり憑き系のホラーかと思える。演出側の責任であり役者に罪はないだけに、人間的情念の発露としての肉体的アクションに人工物の介入を感じさせるのには吐き気がする。
「ござる」口調は、新時代を拓く為の人斬りとして生きてきた彼の、時代にとり残された侍としての自分を敢えて戯画的に見せる振る舞いなのだろうとは理解できるが、スッと入ってくる台詞回しではなく、むしろ終始気になって仕方ないストレス要因と化している。これは、佐藤が演技力でねじ伏せて納得性を持たせるべきフィクション的要素だったと言うべきなのか、それとも、誰が演じてもあれは無理な設定だったと言うべきなのか。いずれにせよ、幸い、佐藤の台詞は続篇では、内容がシリアスさを増すにつれてマンガ的でなくなっていき、素直に彼の熱演を観てられるようになる。
だが、武井咲の学芸会的な稚拙さは犯罪的。師範に全然見えないよ。完結作でのほとんどモブ扱いは必然。唯一、敵に技をかけられて動けなくなりながらも、自分を助ける為不殺の誓いを破ろうとする剣心を制止するシーンでの感情の迸りには見るべきものがある。とはいえ、不殺の姿勢ではどうにも打開できない事態が、彼女の根性だか気合いだかの奇跡でご都合主義的に打破されてしまうのは、物語の根本的課題にガチで向き合うつもりなどないんだなと、冷めた気持ちにさせられる。
剣心の頬の傷にまつわる回想シーンで、彼が斬りつけた新婚さん侍が、死んだ振りしてりゃいいのに「俺には愛する人がいる」とか何とか言って、倒れても倒れても何度も立ち上がって斬りかかろうとするさまは、哀れというには哀れなほど愚かに過ぎ、感動演出の為のゾンビかと思える扱い。あれはない。
全体的に台詞回しがどいつもこいつも現代風でチャラく、時代劇としての重厚感が希薄。剣心のあの茶髪っぽい髪色やら(『眠狂四郎』的理由があるわけでもないし)十字の傷やら「ござる」口調やらのせいで、コスプレ的な気恥ずかしさを、観てるこっちが感じてしまう。
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