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[コメント] 鍵泥棒のメソッド(2012/日)

前作『アフタースクール』とはまた違う引き出しからこんなにも豊穣なコメディーが作り出せる、内田けんじの才能にただただ感服。騙されたい症候群の観客らを一足飛びに追い越して、どんでん返しインフレを見事に克服した。
まー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







今回はプロットや時空間のひねりなどが効いてない分、

主役3人のキャラ設定と、殺し屋の香川が銭湯で足を滑らすというきっかけだけが

この映画の命といっても良い。

だからこそ演者の巧さが引き立ち、映画の引力となる。

設定に溺れたというひともいるが、この監督の才能は、

溺れるほどの設定アイデアの大海を、悠々と泳ぎ切り、

その深い部分まで素潜りし、食べ頃の牡蠣をどさどさ獲ってくる勇敢さと、

必要な砂粒だけを飽くことなく拾い、積み上げていく砂細工のような集中力であろう。

普通、殺し屋を記憶喪失にさせたら、記憶を取り戻す瞬間こそが、

最大のクライマックスだと想起する観客を、

早くも中盤で追い越してゆく疾走感がたまらない。

大団円へ向かって軽快に収束しつつある脚本を故意にぶち壊す、

広末の「なにやってんですか?」には度肝を抜かれた。

幕切れ間近、3人が団地から解放されるシークエンスはさすがに息切れを感じたが、

車から発せられるアラーム音、「キューン、キューン、キューン」の、ラストシーン。

あの「韻を踏む」とでも言うような使い方には痺れたよ、ほんと。

(評価:★4)

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