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[コメント] ハンガー・ゲーム(2012/米)

絶対的なヒーロー、ヒロインを好むハリウッドの文脈でこの手の映画を描く場合の宿命なのだが、あまりに脇が軽んじられている。その上で設定を観客に叩き込む力強さに欠けるため話の割に深刻さがない。致命的である。
Master

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原作未読です。

端的に言って相当期待はずれの駄作である。

この手の作品は日本では『バトルロワイアル』が前例としてあるので、そこを基準に考えてしまうのだが、ゲーム参加者の性格設定を軽んじすぎている。確かに、本作においてはカットニス(ジェニファー・ローレンス)がどうゲームを戦うかに焦点を当てざるを得ないため、そのほかの参加者を「書割」レベルにしてしまうのは仕方ない側面がある。

それでも、例えば訓練シーンである程度の仲間づくりをシナ(レニー・クラヴィッツ)に命じさせるなどして各参加者のキャラクタをそれなりに描きこむことは可能なはず。それがないためカットニスを助ける11地区の女の子が殺されてしまうシーンでもそれが話を進めるための「作業」でしかなく、悲しさが何もない。ないならないでも構わないが、それならカットニスに「埋葬」させたり、11地区で暴動を起こさせるような「激情」の演出をするのは筋が違う。この話は何に力点を置きたいのか終始ぐらついているため、鑑賞中ストーリーに引き込まれないのである。

あと、「チームプレイ」や「スポンサー」といった要素が本作に関しては全くと言って良いレベルで生かされていなかったように思う。こういったもったいない部分も多い。

これらの点を考えるとバトルロワイアルは設定の叩き込みにしてもストーリーの力点の置き方にしても偶然という側面も多分にあると思うが、「正しい」選択をしていたことが良くわかる。七原が完璧な存在でないというのは各キャラクタの見せ場を作るという意味でも正しいし、ゲームの悲惨さを観客に印象付けるという意味でも正しいのである。

まぁ、ゲイリー・ロスではしょうがないかもしれない。次作以降カバーするのは相当困難だろうと思うが、スタッフを熟考しぜひリベンジをしていただきたく思う。

(2012.9.28 シネプラザサントムーン)

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)甘崎庵[*] Tony-x[*]

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