[コメント] 宇宙刑事ギャバン THE MOVIE(2012/日)
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監督はJACの人なのだそうだ。アクション描写の素晴らしさはこれで理解できるし、それゆえに日常を描くシーンの至らなさも許せる気分にはなる。しかしそれなら、ドラマ場面を支えるスタッフには一流の腕が必要であるし、編集次第でいくらでも緊迫感を盛り上げることはできたはずだ。
しかし、この映画にスタッフの力は望めなかった。めちゃめちゃご近所の狭すぎる世界観はまだ許せる。「魔空空間」や「宇宙警察」といった番組の基礎知識を踏まえていないことも許容しよう(正直、「サンドルバ」の怨念など怖くないだろう、とかキルのどのへんが魔女なのか、とかの「こじつけ」が鬱陶しい。キル役の人見早苗は最近見られないステキなサド幹部だが、マクーの船頭はリザードダブラーを含めて多すぎる…のだが、そこまではお約束だ)。もっと問題は初歩的なのだ。
刑事って、特定の人物を守るためになる商売なのか。それすらもできない奴は刑事失格なのか。いきなり体育会系になった先輩にどつき回されてもしょうがないのか。
人質は敵の行動を制するための手段じゃないのか。それを無視する奴はヒーローとしてどうなのか。実際そんな奴の前で悪役は、人質を殺害しても文句は言われないのじゃないのか。
それどころでないのは、観ていた人なら理解できることだろう。普通の女性は、幼なじみの死んだはずの青年が帰ってきて開口一番、俺は宇宙刑事になった、と言われたらワケが判らずパニックになるだろう。さらにもう一人の幼なじみについて、前述の青年と敵対する組織の首領になった、などとは夢にも思わないのが普通だ(しかも、首領になった幼なじみの変心の理由が、「あんな」情けない理由からなどとは)。だいたい、もともと自分の研究のためなら犠牲を厭わない男よりも、主人公やヒロインに非の打ち所のない親友と信じられた男がドン・ホラーに洗脳され、敵になっているほうが怖いし、悲しいだろう。「自業自得」に見えてはダメだ。さもなくば主人公たちの涙に共感はできない。
…ということ以上に、回想シーンによる説明という愚策をくりかえす作劇は下の下だろう。30年を経て甦った本作なればこそ説明は必要だろうが、それならばもっとシンプルな劇に作り変えるべきだった。「コードネーム=ギャバン」で主人公交代を語るなら、むしろコードネームの継承をドラマの主軸とすべきだろう。だからこそ今回の三角関係はしっかりと邪魔だったし、もっと限定すればブライトンが不要なのだ。
編集もひどい。主役二代はどちらもアクションに長け、ユーモラスな一面も持つが、俳優としてセリフを述べ立てる能力にすぐれるタイプではない。そんな不器用な彼らゆえ、演技をうまく切り取らねば大根に見える可能性はやはりあるのだ。若手である石垣佑磨を巧く見せる努力はやはり必要だろうに、それは失敗していないとは言えない。例えば、魔空空間の巧みさを他の場面にも欲しいところだった。
それゆえ、アクションのみの素晴らしさでプラス1。ドラマは観るに耐えない。
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