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[コメント] ある兵士の賭け(1970/日)

撮る人が撮れば、きっと観客の滂沱の涙を絞れたに違いない感動的素材。しかし、おそらく監督のキース・ラーセンは監督経験のないズブの素人。真っ当な演出なら90分で終わる作品に、だれきって疲労してしまった観客が観続ける気力を振りしぼられたのは、きっと山本直純の勇壮なスコアにであろう。娘役に別れを告げた筈の浅丘ルリ子の娘役が絶品だった皮肉さは辛いものがある。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







一番ひどいミスとしては、過労が祟って病に倒れてしまい、浅丘ルリ子に介抱されて意識を失っているフランク・シナトラJr.が、撮り終わったと早合点して目を開いた瞬間の場面切り替え。編集でどうにかなるレベルの間違いだろうに。

デール・ロバートソンの最期も酷い。走馬灯のようによみがえる記憶とともに、危険を避けるポーズで地面に倒れ伏すのだから。思わず「タケちゃんマン」のような懐かしい演出のコントもどきに目頭が熱くなった。

この作品も、『黒部の太陽』などと同じく裕次郎の意志でDVD化を禁じられた映画のひとつであり、2013年をもって解禁されたのだが…せめて石原プロはこうした点も含めて修正するのが故人への礼儀であろうものを、義憤に駆られる気持ちだけが残された。

…でも、それからいろんな記事を見るとそれどころではなかったのかもしれない。石原プロはこの映画のためにハリウッドスターに声をかけまくったが、結果はB級どころの無名俳優しか呼ぶことはできず、集客もおぼつかずに大赤字となったのだという。プロデューサーのひとりは焼身自殺し、その後数十年たっても石原プロは映画製作に出ることなく、『太陽にほえろ!』などのTV作品しか作らなくなったのだそうだ。ほんとうかどうかは知らないが。

(評価:★3)

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