[コメント] シモンの空(2012/仏=スイス)
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スキーリゾートに集う金持ち、働く季節労働者、無職の、掃除婦する姉、スリの弟。とんでもなく美しい高山。もの盗んでも罪悪感のない、罪悪感の麻痺させられる場所なんだろう。
生活のためを別にして、12歳は万引きが「面白い」年頃なんだろう。盗癖ということもあるだろう。私は万引きというのを一度もせずに来てしまった。労働者グループへの即興バザーの最中に、相手のひとりが金払わずに品物持っていって、どうせ盗品だろと云う。少年ケイシー・モッテ・クラインは何も云えず、他の客も何も云わずに売買が続く。誰もがこれらは盗品なのだという共通理解が成立しているらしい。こういう描写は深いものがあった。
姉弟が親子と発覚する中盤に話は大展開する。この展開、たまにあるが、本作は相当に上手く運んだ例だろう。母か姉か判別不明というのはレア・セドゥーにかかってくる処で、これが実に巧みに造形がなされた。ハードな人生とやり過ごしてきたものが垣間見える。少年がバラシて恋人と別れさせてしまってから、怒る母のベッドに潜り込んで眠る件がとてもいい。一緒に寝てほしいから息子は母に金を払うのだった。その他、座り小便から始まり、ふたりが犬っころのようにじゃれ合う幸福なシーンもあれば喧嘩するシーンもある。この親子の関係が剥き出しな感じが心に残った。
茫洋としたラストもいい。少年は喜んでいる。金持ちがいなくなって金づるがなくなったが、セイセイした、万引きしなくていい、というニュアンスもあるんだろう。原題は英語に直せばThe Child from Above。天からの子、ぐらいの意味だろうか。
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