[コメント] 合衆国最後の日(1977/米)
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ベトナム戦争の内情など告発文書がなくてもこんなものであろうし、核抑止力は限定戦を必要としたという組立はとても鋭いと思わされる。だからこんな派手な事件はなくともアメリカ政府が同様の告白を迫られる機会は山ほどあったはずだ。こんなことが起きたらいいだろうなあと思うが、米大統領選では「激しやすい」「感激屋」などの一面をちらとでも見せると大統領に相応しくないと速攻で落選してしまうらしい。だからアメリカ大統領は冷血漢がなることに決まっており、こういう事件への対応は残念ながら起こらない。
だから否定できない理念をエンタメの世界で実現させた本作は立派。普通は大統領の影武者を出すだろうが、そんな突っ込みは理念には不要だ。かつて『アパッチ』で始めてアメリカ賛歌を娯楽として撮ってきたアルドリッチが本作を撮ってしまった、という変遷は興味深いものだ(これは彼が表層批評のスタアだという位置づけと全然関係ない)。
しかし、結局はアメリカ賛歌なのだ。原題がアメリカ国家の引用なのも厭だし(邦題は嫌味にみえる)、ビリー・プレストンがウンコ声で「My Country, 'Tis of Thee」を唸るのにも参る。正義を語るときなぜアメリカ人は国家に依拠するのか。この元祖自由の国という発想は世界に喧嘩を売っている癌であって、利害が衝突する国に対抗上愛国主義を謳わせる免罪符になっているのは外から見れば明らかなのに何で判らないのだろう。私など「感動的」なラストに空々しいものしか感じられない。本作はまだ冷戦下、そんな映画の輸出の時代だったということか。なお、遺作『カリフォルニア・ドールズ』でアルドリッチは、最後に国家でなく州歌を流すに至る。
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