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[コメント] 天使の分け前(2012/英=仏=ベルギー=伊)

俺にはちょっと納得がいかなかった。環境も悪いだろうが、身から出た錆への反省もそこそこに自分だけ都合のいい能力に身を委ねる主人公の描き方は楽しくない。もっともっと紆余曲折奮闘努力はあっていいだろう。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







基本的に気持ちよくなるタイプの映画なのだろうが、それにしても夢のような特殊能力(それはあたかも超能力の如し!)に目覚めてから、曲がりなりにも犯罪的な冒険に出るまでの「スンナリと行き過ぎ」な展開には虫の良すぎる匂いを感じた。主人公が人生に成功するなとは言わない。だが、もう少し苦労しろよってことだ。

たしかに嫁さんとの間に子供ができ、彼も今までの自分を悔いて真人間になろうとしているだろう。しかしそういう人間は、世にはたくさんいてみんなツケを払わされているのだ(どんな豚にも解体される日が来る、っていう古いコトワザもある)。だが、妻子に迷惑をかけずに仕事を得る努力を今まで以上に積む、という道を跨ぎ越して超能力に目覚めたからといって、それに頼り切るな、と言いたい気分にさせられる話の進み方を俺は感じた。なにしろウィスキーのテイスティング能力に目覚めてから、「幻の銘酒強奪&横流し作戦」の実行と成功までには何の障害も立ちはだからない数日しかなかったのだから。…これって、普通のエンタメ映画としてもおかしかないかね。

酒蔵に忍び込んだ主人公の背後から見張りの社員が忍び寄る。

酒樽に間違って突っ込んだ、主人公の服の一本の糸がバレる一因をつくる。

仲間が思い切り振り上げた酒瓶がすべて割れてしまう。

いま思いつくだけでも、この程度のアクシデントは映画プロットでもよくあるものとして挙げられる。いずれも絶望的状況だが、これぐらいの絶望は知恵を振り絞って切り抜けるのがこの手の映画の主人公であるはずだ。逆に言えば、こういう方法でなく「相も変わらず昔なじみのチンピラどもが住所を突き止めて忍び寄る」なんてインケンな方法論に走ってしまうところに、俺はこの脚本を書いた人物との齟齬を感じてしまう。人事を尽くして天命を待つのが主人公じゃないのか。

いや、べつにこういう映画の展開は正しくないというわけじゃない。俺には「いい気な主人公が労せずに成功する話」にしか見えないだけのことです。

(評価:★2)

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