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[コメント] ショウほど素敵な商売はない(1954/米)

ちょっとした手足の仕草や、動作のキレの問題かとも思うが、物足りない。
G31

 アーヴィン・バーリンのミュージカルはMGMでもあるが、やっぱりMGMの方がいい(ちなみに本作は20世紀フォックス)。違いは、気づいたところで言うと、まず楽曲の組み合わせというか並べ順に「構成」がないこと。楽曲にも山があり谷がありクライマックスがあって終焉を迎えるように、優れた音楽映画には全体で一つの交響曲としてまとまっているような調和がある。この作品は一本調子だったり、足踏みしてたり意味のない展開をしたりと、言うなれば雑多、乱雑、脈絡がない。同じことは音響にも言えて、最初に気になったのは、タップ・ダンスのあるシーンで、音楽がうるさすぎてタップの音の聞こえないのがあったこと。楽器の奏でる音色も重なり合い潰し合っちゃって騒々しいという感じだった。

 これはおそらく、本作の追求したものが華やかさ・賑やかさだったからだろうけど、本来ミュージカル映画やダンス・シーンというものは、静寂や憂慮といった状態・感情も表現可能。そういう表現を組み合わせることによって、揺れ動く感情の微妙なせめぎ合い、といったものまで描き出すことさえある。またその方が、華やか・賑やかもより鮮明に浮かび上がるのである。この作品は、ミュージカル映画本来の精彩を欠くきらいがある。タイトル・ナンバーの中に「show people(ショウビジネス従事者)は哀しいときでも顔には笑顔を浮かべている」てな歌詞があったが、これ以外の価値観が映画から出てこないのだ。

 その意味でいいなと思えたのは、ドナルド・オコナーマリリン・モンローの家の前で、月明かりの下、噴水や銅像と戯れながら踊るシーン。ここは素晴らしかった。

 それから、物語にも面白味がなかった。このドナヒュー一家には、第一次大戦終了から第二次大戦前夜までの間の、米ボードビル業界の浮沈を重ねて描いているのだと思うわけだが、エピソードを時系列に並べた以上の意義を見出せないため、なんでこの一家の個別的な物語を共有させられなきゃいけないのか?という気持ちがどうしても生じてしまう。

 そんなところかな。むろん大人数で繰り広げられるタイトル・ナンバーのシーンにはウキウキさせられるものがあった。

75/100(08/01/13再見...劇場初見)

※たとえば「アラバマ行きの夜行列車」のシーンなんて、MGM『(アーヴィン・バーリンの)イースターパレード』で、フレッド・アステアとジュディ・ガーランド二人によるパフォーマンスの方が、300%素晴らしい。

(評価:★3)

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