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[コメント] オブリビオン(2013/米)

全く褒め言葉にはなってないけど、『未来惑星ザルドス』以上にザルドスしていた。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 冒頭シーンでデンジャー・ゾーンが流れていれば大笑いしてやったのに…というのはともかく。

 本作は明らかに原作付きの作品であることはよく分かる。物語自体は単純だが、ちゃんと伏線と結果が合致しているし、何よりほとんど説明をせずに物語を作っているのがたいしたものだ。実は本作で一番感心したのがその点。

 どんな面白い作品であっても、説明がグダグダ続くと興ざめとなる。だが日常生活とは切り離されているSFにおいては説明は不可欠。この兼ね合いが難しい。

 そのために様々な方法が使われるのだが、その中では最初に説明はせずに、物語が展開して行くにつれ、徐々に登場人物の口から語らせるようにさせるのが一番となる。  この作品でも、ちょっとそれはあるものの、基本は映像のみで物語と設定を見せるという高度な方法を貫いた。脚本がしっかりしているお陰なのだが、それでも映像のみでの説得力に溢れた演出は凄い。

 そして説明不足だからこそ、こちら側が推測する部分が増え、物語を堪能出来る。

 そしてもう一点。

 伏線を持つ作品として面白いのは、常に「真実は目の前にある」状態で、主人公だけはそれに気がついてないと言う状況に置くことが重要になる(まさしく『シックス・センス』(1999)はその教科書的作品となる)。それを気付かせないようにするために、作り手の側は様々に努力する。最も多いのは、“真実にもうちょっとで気付く”その瞬間を狙って物語上を盛り上げる方法。この作品の場合、それは妨害という形を取っている。

 その妨害とは、基本的に全編に渡り、何かが起ころうとする度に無人機であるドローンがジャックの目の前に現れるように作られているのだ。それは時に故障として、時に主人公を妨害するものとして。このアイテムの絶妙な用い方が本作の肝だ。ある意味、『トゥルーマン・ショー』(1998)でエド・ハリス演じるクリストフのような存在だが、これが物言わぬ機械というのが面白い。最初に登場したときは、実に頼りがいのある仲間のような存在だが、中盤になってくると、融通の利かない機械の塊にしか見えなくなり、後半になると明確な敵となる。だが、実はドローンそのものは全く存在を変えてはいない。変わったのはジャックの側だった。彼が経験を積み、様々なものを知っていく事で、ドローンを見る目も変わってくる訳だ。

 全く変わってないのに、視点の変化でこれだけ多彩な側面を見せてくれるドローンの姿にこそ本当の面白さが隠されている。最初観た時、あの口のように見える部分で「わあ、ザルドスみたい」と思ったが、実はオリジナル以上に存在感があったのが嬉しかった(『未来惑星ザルドス』(1974)では、単なる輸送機だったもんなあ)。その魅力あって、本作は特殊な位置づけとなり得る。

 緻密などんでん返しの驚きと、ドローンのお茶目さがあったから、物語の強引さについては不問としよう。なんかオチがすっきりしないけど。

(評価:★4)

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