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[コメント] 奇跡のリンゴ(2013/日)

奇跡の、という感じはあまりないね。とうとうのリンゴ。ついにのリンゴ。苦節のリンゴ。そこら辺。    ※review追記。
G31

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 苦節10年、と言うが、ほんとに10年目に花が咲いたのだねえ。花が咲いた、も比喩として使う表現だが。

  ☆ ☆ ☆

 ドラマに乏しいし、絵的にもパッとしない。僕も子供の頃から手にとって食べてたリンゴ、それ一つとってもこんなに知らないことばかりなのかと勉強にはなる。だが映画的であるとは言い難い。

 阿部サダヲが土を食いながら「これだ。これだよ」と言うシーン、観ていて僕もこれですよ、こういうシーンですよ、これがドラマなんですよ、分かってるならもっと活用してよ、と思いましたが、必ずしも分かってないみたいで、その後も畳み掛ける勢いに欠けていた。

 勉強、として見ても、なぜそれに気づくのに10年もかかってしまったのかへの反省と、現在どうなっているかぐらいは、最低限、示しておいてほしいところ。

 物事には、映画で描けることと描けないことと両方ある。映画は、映画で描けることのみで構成されていてほしい。

75/100(13/10/26見)

 ※)観た劇場でパンフ買おうと思ったが、売ってなかったので、ネットでチョロチョロ調べた。この木村秋則さんの農法を、「無農薬・無肥料栽培と言っているのは嘘だ」と、批判する人がいた。映画で特に無肥料だとは言ってない気がするが、字幕で「無農薬〇年目」とやっていたから、こっちは確かに言っている。批判者によると、害虫対策に使用したお酢やわさびも立派に農薬に当たるのだそうだ。映画では、九年目に気づいて“自然栽培”に切り替えて以後、それまでずっと試験してきたお酢やわさびやニンニクといった話題は、出てこなくなった。だから不明は残る。でも批判者の言を読んで、「でも化学薬品を使ってないとは言えるのでないの?」とちょっと思ったのは確かだ。

 一呼吸置いて考え直すと、「それを無農薬栽培と言うことはできない」との批判そのものは、まっとうであることに気づく。

 僕自身は、この映画が「木村さんの選んだ“無農薬”農法の方が、それまでの“有農薬”農法よりも、ベターな農法だ」と描いているとは思わなかった。彼には、妻の健康被害を減らす・無くすという明快な動機があり、十年かかってそれに成功した、というだけだから。もしそれが、経済的に合理性があり、確実に利益を生むものであれば、当然のように皆そうしているはずだ。当然のように皆がそうしていないのは、それなりに理由があるからだろう。それはこの映画の扱うテーマではないと、描いてないだけなのだろう。有農薬でも消費者の健康に影響がないとは明瞭に言っている。

 もしこの映画が、観た者に、「無農薬農法は、有農薬農法より、ベターな農法だ」との印象を与えたとしたら、その帰すべき責(もしくは功績)は十分に負っている作品だ、とは思った。

 映画の感想としては、またずいぶんと長い感想だったねえ。

(13/10/29追記)

(評価:★3)

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