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[コメント] 共喰い(2013/日)

光石研の如何わしげな父親の造形がハマり始めているのに、なぜ彼の見せ場を設けず噂話ばかりで進行させるのか。いつもながら構図の才は抜群だが、性描写だけなぜか平凡。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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「俺の悪い血が俺を堕落させるぜ」とくる。私小説は基本思い込みの世界で、バカバカしいような世界観が斬り込み具合によって我々凡人の常識を瓦解させ、とんでもない普遍性を獲得することがあるから侮れないのだが、本作はSMクラブの痴話喧嘩レベルで終わってしまっている。性にやたら開放的な親子の会話がとても異様だが、それ以上がない。菅田将暉が常識人に過ぎる。私小説だから菅田が全面フューチャーされるのだろうが、彼はどうでもいいから光石の悪行の描写をもっと積み重ねるべきではなかったのだろうか。例えば三國連太郎は狂った役柄を数々演じて作品を傑作にし続けたが、本作ほど少ない出番ではどうしようもなかっただろう。

昭和天皇崩御の自由な論評はいまだに自粛されているらしく、あの異様な空気を映画にしただけで立派だが、映画への取り込み方はいかにも図式的、そもそも天皇制は父権制と母権制の混淆であり、父権を代表した昭和天皇が死んだから恩赦が出たかのように普通にセックスもできるようになりました、では何の批評にもなっていないのではないだろうか。私小説の延長だから思い込みでいい、とはならないだろう。もしかすると云いたいのは、母権に移行することが「未来志向」の天皇制だ、ということなのだろうか。

(評価:★3)

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