[コメント] アンチヴァイラル(2012/カナダ=米)
クローネンバーグとリンチ、両デヴィッドの関心を承け継いだ「肉体」―より正確には「肉」と「皮膚」―の映画。演出家の美意識に適うものだけがフレーム内に存在を許される潔癖症的なルックの一貫性、巻き込まれサスペンスの型を終えてなお観客を未踏の光景に連れ去るラストシーンの心意気に頭が垂れる。
全篇にわたってコンセプチュアルな統一感を維持した美術は、デヴィッド・クローネンバーグ作品中でも際立って厳密な視覚世界を展開した『コズモポリス』のアーヴ・グレイウォルによる仕事だそうで、なるほど腑に落ちるものがある。しかし、主題や細部、またこのようにスタッフに関して父親と共通点を持つことについては一向に構わないというか、だからこそ却って両者の相異について云々する意義も増すのかなあというものだが、主演女優まで共有してしまうというのは全体どういうつもりだろうか。仮に私が二世監督だとしても、それだけは恥ずかしいというか気持ち悪いというか絶対に避けたいところだと思うのだけれども。さも当たり前のような涼しい顔でサラ・ガドンを起用してしまう点にこそ、ブランドン・クローネンバーグと『アンチヴァイラル』の底知れぬ変態性が窺われる。かもしらない。
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