[コメント] エリジウム(2013/米)
映画としては地球とコロニーで別れた世界という事だけれど、類似においてゲーム、”ポリスノーツ”の存在を指摘する人が少ないのが変。小島秀夫も映画を作りたかった人なんだけど。
ジョディ・フォスターはカリカチュアとして描かれている。このキャラクタは右派を皮肉っているが、それだけでは無い。この映画は(収入で)上下に別れた世界の状況を皮肉っている。
日本ではこの皮肉が判らない人もまだいるだろう。そういった人に伝わるかは判らないが、私が知ってる範囲のアメリカ人やカナダ人がどう考えているか伝えることと、私が日本に当てはめるとどうなると考えているか伝えることがこの映画のレビューに相当すると考えている。
選挙当時、アメリカ人の私の友人及び知り合いの民主党支持者は、若い低収入な人はサンダース支持、高収入(投資界隈と、ネット企業を含む大企業界隈)な人はクリントン支持で別れていた。保守の人はトランプ支持を公言する人は少なかった。(支持する候補を言明していなかった。トランプの言説はアメリカ保守の世界観で公の場で肯定的に語れるようなものでは無かった。)所謂オルタナ右翼は友人や知り合いの中にいない。
トランプが当選することによってアメリカのニュースが更に極論に寄っているのは判る。極論の浴びせ合いが多くなっているのは間違い無い。そこに問題はある。だが、もっと重要なのは、今までの経済運営のやり方では格差が広がる事だ。
トランプ当選以降は移民が賃金の平均が上がるのを防いでいるとの論がある。ある程度事実ではあると思う。一方でヨーロッパ系がやりもしない仕事をやってくれるというのもある(日本で例を挙げるなら賃金が幾らであってもインドネシア人が支えている漁師見習いをやりたい若い日本人は殆どいないと考えている。)。そして移民してもらう事で国民に恩恵が与えるような人もいる。私が知っているカナダ人はムスリムの医者がカナダに貢献していると考えていた。(なにしろ人口密度が低いから、少しでも医者が多いほうが有難い面はあるだろう。距離で生死に関わる事もありえるだけに。)単純に移民が好きとか嫌では無く、協力して利益を出せるようにする事が肝要だろう。逆に移民を使って今低賃金で喘いでいる人の可能性が更に閉じる底辺への競争を行い、それを自業自得等と言うのは許されない筈だ。(要するに全部移民が良いとか駄目とか両極端なのは賛同を得れないし、ディティールをつめる事が前から住んでいた人と協力するために必要不可欠だろう。)人を安く使いたいだけの企業が移民が必要だと話をするのは問題があると考えよう。(今日本でなし崩しに行われていることでしょう。)
私はトランプ当選はあくまでメッセージ(今までのやり方では駄目という意味で)として重要として考えていて、私はトランプが世界を救うとか、逆に世界を滅ぼすとかいったことは考えていない。(どうしてそう考えるかは”待鳥聡史 アメリカ大統領制の現在”参照のこと)それよりも日本人が考えるべき事は100時間以上の労働に罰則をつけるとか、大企業に残業時間を報告させるといった流れをどう持続させていくかだ。
日本だと思想が右かつ労働問題を気にしている人が多いのだけれど、それは左の人間をくさす事で解決するような事でも無い。(労働問題を重視しない人間が多い等くさしたい事があるのは了解しているし、野党が労働問題で主導権を取れてないのは指摘して良いし、するべき。)ワーキングプアが対峙すべき日本の経営者は特に政治左派が多い訳では無い。今この労働問題の流れが続いているのは電通事件のせいだけではなく、トランプがネットの力を使って当選した事が間違いなく関係している。(ネットで流れている言葉が自分たちの支持者からのものだったり、左右の枠を超えた時には無視できないということだろう)だから、みなし店長やみなし残業の禁止や派遣やフランチャイズの問題等のディティールをネットで挙げ続け、話を廻せばこの流れは続く筈。逆に黙ってたり、他のことばかり話したらこんなチャンスは続かない。(トランプで溜飲下げたい人が多いんだろうけど、アメリカの事ばかり話したって日本の景気は良くならない。クルーグマン読んだ事ある人なら知ってる筈。)
日本の政治は2大政党両方とも”企業がバックアップするエスタブリッシュメント”なのだから一般の人がどのような事を喋ってるかを知らせて、出来るところは考えの違う部分を棚に置いといて協力し、ボトムアップで流れを変えていくしか無いと考えている。(国会議事堂前でやってたデモが反安保(ノスタルジア)じゃなく、オキュパイ・ウォールストリート運動に相当するものや労働問題を扱うものだったらどうなったか考えてみれば良い。(オキュパイ・ウォールストリート運動等、きちんと現状に沿った文脈で発された”今のやり方では駄目”っていうボトムアップのメッセージを、左派が訴えてるからって日本でトランプを評価する右派が否定するとしたら、それが日本でわざわざトランプ支持者をやっていることと並立する訳が無い。そういった人間がいたら流石に突っ込み放題だろう)
せめぎ合いばかりやってると世の中変わらないだろう。せめぎ合いをやるなとは言わないが(私だっておとなしい人間では無いし。)、せめぎ合いばかりじゃ世の中に有害。緊縮だけで失われた20年になった訳じゃ無く、折伏しようとするばっかりで上手くコミュニケーションが廻らなくなったのも日本社会停滞の原因だろう。日本ではトランプやサンダースはいないからこそ流通する言葉を変える努力が必要だ。そのためにイデオロギーを超えて言葉を廻す必要性がある。ボトムアップがあればそこを狙う人間も出るかもしれない。協力出来る事に関しては前に進めよう。協力が極端な結論や候補者を選ばないコースへの最適解でもあるだろう。
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